『ずるいって おもっちゃう!』
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「ずるい」と思う気持ちをテーマにしたソーシャルスキル絵本
[レビュアー] 夢眠ねむ(書店店主/元でんぱ組.incメンバー)
夢眠ねむ・評 『このきもち どうする? ずるいって おもっちゃう!』わかる[著]
今までざっくばらんな場ではガサツに喋ってしまっていたのだが、職業柄子どもと喋る機会が多くなり、日常のお喋りの表現に気をつけるようにしている。自分の子どもが生まれたのでなおさらである。
その中で一番言い換えに気を遣っているのが「ずるい」だ。大人同士の会話では、ちょっとポップに「それずるいよね~」と気軽に使うこともあったが、気を遣い始めてからは「それず……羨ましいなあ!」と言うようにしている。ずるいという言葉はかなり使いやすく、強く、ストレートに使うとしっかりネガティブに聞こえるので意識しないと嫌な感じのレパートリーになってしまう。
『このきもちどうする? ずるいっておもっちゃう!』は、『感情を育てる じぶんのきもち』から始まったソーシャルスキル絵本シリーズ第2弾。ニコニコした顔のイラストが特徴的なわかるさんと、発達心理学を専門とした渡辺弥生さんのタッグだ。
私は単純にずるいを羨ましいと言い換えていたけど、そうか、羨ましいだけじゃなくて悔しい、悲しい場合もあるのか。ずるいってどんな時に感じる気持ち?=自分が手にしたいものを他の人が手にしている時、と解説していて、簡単に使っていた言葉をほぐしていくのって絶対に必要だなと痛感。このシリーズのメインキャラクターである犬のエモしょんは「みんながずるいとおもわないようにこうするのはどう?」と、自分たちでルールを作ることを提案してくれる。
2~3歳から始まるいざこざの多くは“ずるい”で構成されていそうだが、もしかしたら大人のいざこざもそうなのかもしれない。便利な言葉だからこそ、“ずるい”の主成分は怒りか悲しみかはたまた妬みかと解き明かす訓練をしていくのは大人も子どもも必要な作業だ。状況により気持ちのもっていき方や解決方法が変わってくる感情だからこそ、どう対処していくかをこの本を読んで子どもと一緒に考えたい。