『日米首脳会談』
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読み物として面白く頼れる現代史の記録
[レビュアー] 林操(コラムニスト)
林操・評 『日米首脳会談-政治指導者たちと同盟の70年』山口航[著]
国際政治の若き専門家の新書単著デビュー作なのに、読み始めたら止まらない。そういう奇跡に出会える一冊が登場しまして、その名も『日米首脳会談』。
まずイイのは読み物として。吉田から岸田、トルーマンからバイデンという累代の総理たち大統領たちが主人公(脇役も全員濃い!)という配役。通算約150回あった日米サミットで彼らが出会っては別れる大きな物語。折々の両国の課題や世界の危機が会談を通じてどう解決されるのか(されないのか)という局面ごとのスペクタクル――。Netflixがドラマ化してもワタシゃ驚かないね。
次に惹かれるのは、頼れる現代史の記録として。著者の山口航は研究者だけに一級資料や名著から史実や当事者の言葉を丹念に拾って丁寧に並べてくれるから、いちいち「これホント?」と眉に唾せず、戦後80年を追体験できる。
事実を連ねるなかに諧謔と皮肉を混ぜ込む筆致がまた巧みだとして、もうひとつ大きいのはこういう書を“またトラ”の今、読める幸せ。安倍と踊った1期目の首脳会談からは再臨トランプのトリセツが見えてくるし、あの言い分、あのやり口の源泉がレーガンどころかニクソンにまで辿れると発見できたりもする。
どうせ属国と冷笑するアナタも、対等な独立国たれと熱弁ふるうアナタも、どうでもいいけどトランプ怖いニッポン暗いと慄(おのの)くアナタも、ただ暇のあるアナタも、まずはこの新書を。地味なのはタイトルだけです。