『自分の価値のつくりかた』
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【毎日書評】めんどくさいとか、相性の善し悪しで人間関係をあきらめてはいけない
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
アメリカのギャラップ社の世界各国の企業を対象に実施した従業員意識調査(2022年度)によれば、日本の職場でのエンゲージ、つまり仕事や会社に満足している従業員はたったの5%であり(OECD加盟国平均は20%)、じつに95%の人が嫌々会社に行っていることになります。(「はじめに」より)
『自分の価値のつくりかた』(安田雅彦 著、フォレスト出版)の著者は、本書の冒頭でこう指摘しています。たしかに、終身雇用制度がなくなり、年功序列という考え方も形骸化した状況においては、仕事に希望を持てなくなっても仕方がないのかもしれません。
とはいえ、日本社会がいますぐ“前向きな気持ちで仕事に臨めるような社会”に変わることは難しいと考えるべきでしょう。
しかしそれでも、自分自身がいまの働き方に不満や疑問を抱き、それを本当に変えたいと望むのであれば、自分次第で環境を変化させることは不可能ではないはず。
しかもそれは、どんな逆境をも乗り越え、成果を出すことのできる“自分だけの最強の強み”になるに違いありません。
本書の根底にあるのは、そんな考え方。
本書で紹介する手法を一つ一つ着実に実践していけば、「明日もここで働きたい」「この仕事と深くかかわりたい」という気持ちを持ちながら働けるようになって、自分で自分の人生をコントロールできるようになるでしょう。
そして、世界中どこでも通用するあなただけの価値、その価値を生み出す源泉となる「パーパス(存在意義)のある人間」になることができるようになります。(「はじめに」より)
なかには「私には難しい」と思われるような内容もあるかもしれないけれど、それらも必ず自分のためになるはずだと著者は断言しています。そんな本書のなかから、きょうは第3章「目標達成のための人間関係のつくりかた」に注目してみたいと思います。
望む人生を送るためには、人間関係を蔑ろにしないことが大切
いうまでもなく、人間関係を良好に保つことはとても大切。それが実現できれば、仕事にも人生にもポジティブな影響がもたらされるからです。
当たり前ですが、人間は1人では生きていけません。また、社会人にとって多くの人とかかわりながら働くことは必然だと言えます。
もちろん、他人との関わりをなるべく絶って生きていくことも可能でしょう。人生はその人のものですから、私がとやかく言うことではありませんが、そのような生き方をし続ければ、少なくともパーパスを実現することも、定めた目標を達成することも絶対に不可能です。(82〜83ページより)
人は人と触れ合うことでこそ成長していけるものだからこそ、良好な人間関係を築くことは人生や仕事によい影響を及ぼすわけです。
もちろん人と接するなかで悩むことはあるはずで、それは著者も例外ではないようです。誰にでもよい顔をしてしまう性格なので、板挟みになりやすくもあるのだとか。
とはいえ、そこでうじうじ悩んだところでなにも変わらないはず。なにかが起きたとしてもただ悩むのではなく、ひとつひとつ対策をしていくことのほうが賢明であるわけです。(82ページより)
人間関係は相性の善し悪しで決まらない
ただし人と接する際に、「この人とはどうしても合わないな……」と相性の悪さを実感することもあるもの。逆に、「この人は初対面とは思えないほどフィーリングが合うな」と直感的に感じることもありえます。
さまざまな価値観を持ついろいろな人とかかわりながら生きていく以上、相性の善し悪しを感じることはむしろ当然なのです。しかし、それを単なる相性で終わらせてしまったのでは、自分のパーパスを実現させることも、定めた目標を達成することも難しくなるかもしれません。
なぜなら、「相性が良い」「相性が悪い」という時、そこには偶然性が内包され、再現性も反省点も見出せずに終わってしまうからです。つかり、成長しないということです。
また、組織やチームで仕事をしている以上、「合わない」と言ったところで仕方ありません。(84ページより)
なお、「この人とは合わない」と感じた場合、その原因は「相手が自分の思いどおりにならなかった」という自分本位の感情にあると著者は指摘しています。
つまり相性が悪いという思いの正体は、「相手はこうしてくれるだろう」「こう反応してくれるだろう」という、“自分の思いどおりに相手が動いてくれなかったことに対するフラストレーション”が引き起こした心理的錯覚にすぎないということ。しかし、それがナンセンスであることは誰の目にも明らかなのではないでしょうか。(83ページより)
利己的な人間同士だからこそ歩み寄る
人はみな、生まれ育った環境も、考え方も、ものの捉え方も違うもの。自分の思いどおりにならなくて当然ですし、それ以前に、こちらに落ち度があったから思いどおりにならなかったというケースだってあるかもしれません。
なのについ、自分目線で物事を考えてしまいがち。だから思いどおりにならなかったときには、その現実を受け入れられず、「たまたまその人とは相性が悪かった」という偶然性に逃げ込んでしまうわけです。
本来は、「他人は根本的に自分自身とは異なる」という前提に立ち、「自分から歩み寄らなければわかり合えることはない」と謙虚に考える必要があります。そのように、自分目線から相手目線に変える努力をしなければ、良好な人間関係を構築することはできません。一方的な考えを押しつけ合っていけば、お互いを理解し合うことなど到底できないからです。(86ページより)
もちろん基本的に人間は利己的な存在なので、つねに相手目線で考えることは決して簡単ではありません。
うまくいかなくて自己嫌悪に陥るなど、ときには精神的につらくなることもあるでしょう。しかしそれでも、そういった地道な努力こそが自分のパーパスとそのための目標達成の手助けをしてくれるのだと著者は主張しています。(85ページより)
ここで紹介されているのは、著者自身が自分らしく生きるために実践してきたメソッドだそう。それらを伝えることで、読者に少しでも自分らしく価値のある人生を歩んでもらえればという思いが根底にあるわけです。自分の人生をよりよくするために、参考にしてみてはいかがでしょうか。
Source: フォレスト出版