『投資で変わる日本経済』宮川努著

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投資で変わる日本経済

『投資で変わる日本経済』

著者
宮川 努 [著]
出版社
筑摩書房
ジャンル
社会科学/経済・財政・統計
ISBN
9784480076571
発売日
2024/11/08
価格
968円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『投資で変わる日本経済』宮川努著

[レビュアー] 櫻川昌哉(経済学者・慶応大教授)

 本書は、労働生産性の停滞、そして30年にわたる経済成長率の低下をもたらしたのは、設備投資額の低迷、人的資本への投資の不足、イノベーションに結びつかない投資の質の低下であると、データを読み解きながら丁寧に語る。

 その背後には「アマチュア資本主義」があると喝破する。日本の労働市場は、専門的な能力が賃金に反映されるプロの市場になりきっていない。能力以外の要素、特に人間関係を円滑にする協調性が重視され、賃金の決定プロセスが曖昧なアマチュアの市場であると手厳しい。こうした馴(な)れ合いの労働環境では、人材は適性や能力に応じて配置されず、トップのリーダーシップも確立できずに意思決定も遅れがちとなる。

 中途半端なデジタル投資にそれがよく反映されている。投資が組織の変革と人の再配置をともなってこそ経済のデジタル化は進むはずである。デジタル化の立ち遅れは、海外のスーパーと比較してみるとよくわかる。決済のレジは自動化が進み、そこに店員はほとんどいない。

 生産性低迷の真因解明に挑んだ良書である。(ちくま新書、968円)

読売新聞
2025年1月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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