『書庫をあるく』南陀楼綾繁(なんだろうあやしげ)著

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書庫をあるく

『書庫をあるく』

著者
南陀楼綾繁 [著]
出版社
皓星社
ジャンル
総記/総記
ISBN
9784774408408
発売日
2024/12/13
価格
2,530円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『書庫をあるく』南陀楼綾繁(なんだろうあやしげ)著

[レビュアー] 清水唯一朗(政治学者・慶応大教授)

 図書館は雪のようだと思う。本が棚となり、館が建ち、人が集まる。核から氷へ、そして雪となり、人を集める。ひとつのかたちに留(とど)まることなく、土地により、時代により、姿かたちを変えていく。

 そんな姿を見てみたくて、出張に行くとつい図書館に寄ってしまう。足が向くのは郷土の棚。土地の魅力が詰まっている。

 著者も同志と興奮して本書を手に取ったが、その行動は想像を超えていた。閉ざされた書庫の扉を開けて分け入っていくのだ。あやしいにもほどがある。

 地域の知を集め、戦争を乗り越え、受け継がれてきた書庫。作家や学者、患者や会社のコレクションを絶やさず手入れした文庫。著者は居並ぶ本から、かかわった人の想(おも)いを読み取る。

 各地に図書館が作られていくのは二〇世紀のはじめだから、一二〇年ほどが過ぎた。雪は解けるが本は積みあがる。

 本書で紹介されるように、書庫を切り出した展示やバックヤードツアーが行われている。魅力にあふれた書庫を開き、活(い)かす取り組みがはじまっている。(皓星社、2530円)

読売新聞
2025年1月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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