『「できる大人」の人を動かす言葉 ずるいモノの言い方』
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【毎日書評】断りたいけど「相手を不快にさせたくない」とき、いい感じに伝えるフレーズ6選
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
著者によれば、『「できる大人」の人を動かす言葉 ずるいモノの言い方』(佐藤幸一 著、総合法令出版)のサブタイトル内に“人を動かす言葉”というフレーズが用いられていることには理由があるのだそうです。
人を動かすのはなかなか難しいもの。「早くやって!」とせかしたり、「お願いだからさぁ」とすり寄ったり、「急いで!」と声を張り上げたからといってどうなるものでもないわけです。
しかしそんななか、さっと相手が動き出すようなひとことを無理なく口に出せる人がいるのも事実。つまり、そういう人が発することばこそが“人を動かす言葉”であり、それらを駆使する手段こそが“ずるいモノの言い方”だということ。
たとえば、「早くやって!」を「期待していますよ」といいかえれば、相手の心のなかにうれしさとやる気が生まれる可能性が高くなります。少なくとも、「早くやれ」と命令されるよりポジティブな気持ちになれることでしょう。
とにかく、言葉は使いようです。
ネガティブな言葉をやめて、ポジティブな言葉を日々積み重ねていくと円満な人間関係、円滑なコミュニケーションが成り立っていきます。前向きな言葉に言い換えていくと、自分も相手も気分よく付き合え、信頼関係を育み、人間関係も仕事の結果もよくなっていくのです。(「はじめに」より)
もちろん、ただポジティブに言い換えるだけでなく、相手を思いやって口にするべきタイミングやシーン、相手との関係性に気をつけ、TPOに合わせたことば選びも重要。そこで本書では「シチュエーション」「言い換えフレーズ」「実例」などを踏まえながら、さまざまなことば(フレーズ)を紹介しているのです。
きょうはそのなかから、なにかと口に出しづらくもある「断り」のことばに焦点を当てた第5章「後に引かない『断り』言葉」に焦点を当ててみましょう。
しつこく頼まれたとき
NG これ以上はやめてください
OK 事情をお察しください
実例:事情をお察しいただけないでしょうか。
(90ページより)
「しつこく頼まれるものの、承諾できない」ということはよくあります。とはいえビジネスの現場であればなおさら、断りにくくもあるのではないでしょうか。しかしそんなとき、「やめてほしい」という意思をストレートに伝えるのは危険。信頼関係にひびがはいってしまうかもしれないからです。
でも上記のように言い換えをすれば、相手を不快にすることもなくなるわけです。言い換えのことばとしては、他に「ご容赦願います」「ご配慮いただけますでしょうか」なども。(90ページより)
今はできないとき
NG 今はできません
OK 今回は見送らせていただきます
実例:興味深いご提案ですが、今回は見送らせていただきます。
(91ページより)
「できません」と伝えると否定的なニュアンスが増幅されてしまいますが、「見送る」であれば、今回はやむを得ず断るのだという印象を与えることが可能。今後も良好な関係を続けたい相手に対して使うべき表現だといえそうです。(91ページより)
その仕事はできないと伝えるとき
NG その仕事はできません
OK 他のことでしたら、ぜひ…
実例:他のことでしたら、ぜひお引き受けさせていただきたいのですが…。
(91ページより)
たとえ本当にできなかったとしても、「その仕事はできません」と伝えたのでは相手の申し出を全否定することになってしまいます。でも、「他のことでしたら」であれば、柔らかく断ることができます。(91ページより)
無理な要求をされたとき
NG それは無理です
OK ご勘弁いただけますでしょうか
実例:これ以上の値引きは、ご勘弁いただけますでしょうか。
(92ページより)
取引先や立場が上の相手の場合は、「その要求はのめない」旨を伝えるにあたっても低姿勢な表現を用いて断るべき。そうすれば、角を立てずにすむからです。(92ページより)
手助けを断るとき
NG 間に合っています
OK 自分の力で何とかなりそうです。
実例:お気遣いありがとうございます。自分の力で何とかなりそうです。
(93ページより)
手助けするといってくれている相手に、「間に合っています」と返すのではあまりに失礼です。結果的に手伝ってもらわなかったとしても、相手の厚意に対して感謝の気持ちを伝えることが大切。そうすれば、円滑な人間関係を築くことができるからです。(93ページより)
無理難題を持ちかけられて断るとき
NG 私にはできません
OK お力になれません
実例:恐れ入りますが、その案件にはお力になれません。
(94ページより)
できないことを相手に伝えたいとしても、「できません」では無愛想すぎ。しかし「力になれない」と伝えることで、表現を柔らかくすることが可能に。(94ページより)
世の中は「ことば」を中心に動いているといっても過言ではなく、どんなことばを使うかがビジネスの結果を左右することもあります。だからこそ本書を活用し、日々のコミュニケーションをより円滑にしたいところです。
Source: 総合法令出版