具体と抽象の往復運動ができる人は、どんな環境でも活躍できるマネージャーになれる!

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失敗事例から学ぶ! マネージャーの思考術 管理職の“落とし穴”に陥らないための具体と抽象の往復トレーニング

『失敗事例から学ぶ! マネージャーの思考術 管理職の“落とし穴”に陥らないための具体と抽象の往復トレーニング』

著者
坂田 幸樹 [著]
出版社
翔泳社
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784798188805
発売日
2025/01/17
価格
1,848円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】具体と抽象の往復運動ができる人は、どんな環境でも活躍できるマネージャーになれる!

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

たとえエース級のプレイヤーがマネージャーになったとしても、以前と同じように活躍できるとは限らない――。『失敗事例から学ぶ! マネージャーの思考術』(坂田幸樹 著、翔泳社)の著者はそう述べています。

なぜならマネージャーになると、現場のすべての事象を直接確認することは困難になるから。しかも現実問題として、間接的に入ってくる情報をもとに現場をマネジメントしなければならないケースも少なくないはず。だからこそ、「マネージャーの思考術」を身につけておくことが大前提になるというのです。

マネージャーの思考術は、あらゆるマネジメント術の基盤となるものです。マネージャーの思考術を身につけているからこそ、現場で問題を発見し、解決策を考えてうまく伝えたり、チームが活動するための場を設計したりできるのです。(「はじめに」より)

著者によればマネージャーの思考術とは、「具体と抽象の往復運動」。現場で起きている具体的な事象を抽象化して解決策を導き出し、それを現場で実行できるように具体化する必要があるということです。

そこで、本書の出番。ここでは、メンバーの多様化、数値化・言語化、アジャイル化など、マネージャーにとって必須の11のマネジメント術を使用することで、“落とし穴”に陥ってしまった人の失敗事例を紹介しているのです。

本書を通して、その失敗要因が往々にしてマネージャーの思考術にあることがわかっていただけると思います。登場人物と同じ目線に立って何が問題だったのか、どのようにすれば良かったのかを考えることで追体験をしながら正しいマネージャーの思考術が身につきます。(「はじめに」より)

しかし、そもそも現代においてはなぜ、マネージャーの思考術が必要なのでしょうか? そのことを明らかにするべく、ここでは序章「なぜいま、マネージャーの思考術が求められているのか」に焦点を当ててみたいと思います。

マネージャーの思考術を身につけるべき理由

組織を効率的に運営し、メンバーの一体感を醸成するためには、効果的なマネジメントへの働きかけが不可欠。とはいえ、さまざまな取り組みを行えば、組織のマネジメントが必ず改善されるとは限りません。

だいぶ変化してきたとはいえ、そもそも日本企業においてはメンバーシップ型の終身雇用制がまだまだ一般的。そして競合他社や異業種との交流が限られているため、多くの会社では独自のマネジメント術が代々伝承されているのだと著者は指摘しています。

もちろんそれ自体を否定する必要はないかもしれませんが、そもそも日本企業において従業員エンゲージメント(自社や仕事に対して抱く共感や愛着)は世界一低いのだとか。だとすれば、幾多の問題を抱える企業内で実践されているマネジメント術の活用法には多くの改善の余地があると考えるべきではないでしょうか。

しかもコロナ禍を契機にリモートワークの導入が急速に進み、ビジネスパーソンの働き方は大きく変わりました。外国人との協働やスタートアップとの連携など、働き方やパートナーシップの機会も増えています。さらには生成AIの活用も各方面へと広がりつつあり、そうした変化の速度は今後も加速していくことでしょう。

環境や働き方が変われば、それにあわせて使われるマネジメント術も変化しますが、それらを支えるマネージャーの思考術は普遍的なものです。つまり、マネージャーの思考術を身につけていれば、時代とともにマネジメント術が変化しても、それに対応して結果を出し続けることができます。(20ページより)

逆にいえば、マネージャーの思考術を身につけないまま、ただ流されるように最新のマネジメント術ばかりを導入したとしても、結果的にチームのマネジメントは失敗に終わる可能性があるのです。(18ページより)

マネージャーとプレイヤーの違い

当然のことながらマネージャーの仕事は、プレイヤー(本書ではプレイヤーのことを“部下がひとりもいないメンバー”と定義しています)のそれとは決定的に異なります。

プレイヤーはつねに現場の情報と直接的に接していますが、先にも触れたとおりマネージャーは直接現場の情報に触れることは難しくなるわけです。

プレイングマネージャーの場合は、現場の情報に触れる機会もあるでしょう。しかし部下に任せる仕事が存在する以上、間接的にしか得られない情報は増えていくことになります。

例えば、百貨店Aで婦人服の売上が下がっていたとしましょう。販売員は現場の情報に直接触れているので、売上低下の原因が商品Bの在庫切れだとすぐにわかります。自律的な販売員であれば、ほかの店舗に連絡して、在庫を確保することが直ちにできるでしょう。

では、百貨店Aの売上が下がっているという情報を単に帳簿で見るだけのエリアマネージャーの場合はどうでしょうか? もちろん、販売員に連絡して状況を聞けば、すぐに商品Bの在庫切れに気づけるでしょう。しかし、エリアマネージャーが担当している店舗が20店舗もあれば、会話する時間をすぐにはつくれないかもしれません。(21〜22ページより)

こうした状況で、現場の情報を得ないまま「売上がおちているからしっかりするように」というようなメッセージを送ったとしたら、「現場での苦労や状況を理解してもらえない」と販売員が落胆するのは無理もない話。その結果、心を閉ざしてしまうことも考えられます。

これは単純な例ではありますが、現場ではこうしたさまざまな問題が日常的に起きているわけです。目を背けるべきでないのはその点です。

もちろん、すべての店舗で発生している問題をすべて聞いて、マネージャーが解決策を考えることは現実的ではありません。しかし、マネージャーはすべての現場の情報に直接触れていなくても、解決すべき問題を発見し、適切な解決策を考え、現場に伝える必要があります。

また、外国人の従業員が増え、リモートワークによる働き方の多様化が進む中で、メンバーが仕事をしやすい場をつくることもマネージャーの重要な役割です。(23ページより)

だからこそ、どのような状況になったとしても対応できる能力として「マネージャーの思考術」を身につけておく必要があるというわけです。(21ページより)

こうした考え方に基づき、以後の章では22種もの具体的な事例が紹介されていきます。それらは、著者自身がマネージャー時代に経験したものや、経営の現場で実際に見聞きしたもので構成されているそう。そのため説得力があり、さまざまなケースに当てはめて活用することができるのです。

Source: 翔泳社

メディアジーン lifehacker
2025年1月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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