『「頭の中のひとりごと」言いかえ図鑑』
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【毎日書評】疲れない思考になる。ネガティブ「ひとりごと」言いかえテクニック
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
私たちは無意識のうちに、頭のなかでひとりごとをつぶやきながら過ごしているもの。それがポジティブで前向きな内容であれば問題はなく、気持ちも明るくなることでしょう。
しかし、「あんなこと、いわなければよかった」「こんな仕事、やっても意味ないのに」「なにをやっても、どうせうまくいかない」など、ネガティブなものだったとしたら、気分が滅入って重たい気持ちになってしまうに違いありません。
『仕事で疲れた心がすっと軽くなる 「頭の中のひとりごと」言いかえ図鑑』(片田智也、川見敦子 著、ぱる出版)の著者が次のように述べるのも、そんな現実があるからこそ。
仕事をしていればつらいこと、しんどいことは必ず起きます。問題や面倒ごとをゼロにすることはできませんが、そういった物事をどう思うか、どう認識するか? 「頭の中のひとりごと」であればあなた自身が決められます。自覚なく物事を大きく捉えていないか? 頭に浮かんだ言葉を客観的に見直す習慣を持つようにしてください。(「はじめに」より)
そして、こうした考え方を軸として本書では、つい口にしてしまいがちな「心が重くなるひとりごと」を「すっと心が軽くなるひとりごと」に置き換える81例のパターンを紹介しているのです。
特徴的なのは、「人間関係」「ストレス」「コミュニケーション」「失敗が怖い」「メンタルが不安定」「逆境や困難」と、“仕事でよくある状況”ごとにまとめられている点。そのため気になる項目から読むことができる、とても実用性の高い一冊になっているのです。
きょうはpart2「ストレスや面倒ごとで疲弊」のなかから、3つの考え方に注目してみたいと思います。
雑事がほったらかし状態
× 心が重くなるひとりごと
なんで誰もやらないの?
〇 すっと軽くなるひとりごと
私がやればいいか
(46ページより)
ゴミをまとめたり、荷物を受け取ったり、来客の対応をしたり、コピー用紙を補充したりと、職場には「名もなき仕事」=「雑事」がたくさんあります。地味で面倒なわりには、やったところで評価されるわけでもないので、「できればやりたくない」というのが本音かもしれません。
とはいえ誰も手をつけず放置されたままだったら、やはり気になってしまうはず。そのため自分のことは棚に上げ、「なんで誰もやらないんだ?」とモヤモヤしてしまうこともあるのではないでしょうか。
本当に気づいていない人を除き、たいていは誰しも「誰か早くやってよ」と気になっているものでもあります。そんななか、あえて気づかないふりをしたり、ちらっと同僚に目をやっても視線をそらされたり「無言の押しつけ合い」が始まると、心はどんどん重くなっていくことでしょう。
だったら、重苦しい気分で待つのではなく、「私がやればいいよね」と、すっと立ち上がって片づけてしまいましょう。
「なぜ私が損をしないといけないの?」と思ったでしょうか? でもそれは、「皆のために犠牲になろう」という意味ではありません。「誰かやってよ」というもやもやで心をすり減らさないため、あくまでも自分の心を守るための判断なのです。(47ページより)
たしかに不満に思うくらいの余裕があるなら、雑事であっても進んでやったほうが心は穏やかになるはずです。(46ページより)
想定外で頭がプチパニック
× 心が重くなるひとりごと
どうしよう? どうしたら?
〇 すっと軽くなるひとりごと
よし、いったん落ち着こう
(48ページより)
予期せぬ状況になると、程度の差こそあれ、誰でも動揺して軽くパニック状態になってしまいます。「落ち着かなければ」と思っても、逆に「どうしよう?」と焦ってしまうかもしれません。
しかしパニック状態になると、危険からいち早く抜け出そうと、「どうするのが正解か?」「なにをするべきか?」と、アクションを起こすことばかりを考えてしまいがちでもあります。とはいえ「急いては事を仕損じる」ということばがあるように、焦って行動してしまうと、より事態を悪化させることになりかねません。
そこで、「ちょっと動揺しているかも」「いつもの自分じゃないな」と感じたら、「よし、いったん落ち着こう」と頭を切り替えるべき。
大切なのは、「どうするべきなのか?」という自らの問いにあえて答えないこと。客観的に考えられるようになるまで、判断や行動をとりあえず保留することです。(49ページより)
冷静さが戻ってくれば最善の判断ができるようになり、大変な状況でも切り抜けられるということです。(48ページより)
建前でやっている仕事
× 心が重くなるひとりごと
やってもどうせ意味なんてない
〇 すっと軽くなるひとりごと
意味がないことに意味がある
(50ページより)
会社には「やらなくてもいい仕事」、やってもやらなくてもさほど変わらない「建前の仕事」があります。そのため「やっても意味がない」と感じても仕方がないかもしれませんが、大切なのは、会社の仕事に意味を求めすぎないこと。
実質的な意味はなくても存在そのものに意味がある。会社の仕事には、ある程度そういった残念な性質があるものです。(51ページより)
したがって、「どうせ意味がない」と思ったら、「いや、意味がないことに意味がある」と気持ちを切り替えることが重要。そして、「そういうものだ」と割り切って粛々と終わらせればいいのです。(50ページより)
前述したように、最初から順序立てて読む必要はなし。しんどくなったときにパラパラめくるだけでも効果が期待できるそうなので、知らず知らずのうちに狭くなってしまった“考えの視野”をもとに戻すためにも効果がありそうです。
Source: ぱる出版