文春の社員が“ほぼ実名”で登場…「直木賞」を異様に細かく描写する「村山由佳」の生々しくて恐ろしくて最高に熱い小説賛歌

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PRIZE―プライズ―

『PRIZE―プライズ―』

著者
村山 由佳 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784163919300
発売日
2025/01/08
価格
2,200円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

エンタメ出版業界のリアルすぎる内側 直木賞選考の下世話な楽屋話を暴露!

[レビュアー] 大森望(翻訳家・評論家)

 いやもう、めっちゃ面白い。

『文学賞メッタ斬り!』以来、私も野次馬ながら、それなりに長く直木賞を見てきた立場ですからね。

「どうしても、直木賞が欲しい」そんな作家の業を正面から赤裸々に描いて、エンタメ出版業界を震撼させた内幕小説――みたいな話を聞いたら、手にとらずにはいられない。お手並み拝見と読みはじめたところ、のっけから新刊発売記念サイン会のリアルすぎる裏側に慄然。終了後のなごやかな慰労会が、作家の発した「反省会」の一言でたちまち地獄に変わる。

 この強烈な一撃は、しかしまだほんのジャブでしかない。本書の主役を張るベストセラー作家・天羽(あもう)カインが編集者に与える数々の恐怖と戦慄は、自分が担当じゃなくてほんとによかったなあと胸を撫で下ろすほど。しかも本書は、(筒井康隆『大いなる助走』と同じく)直木賞の勧進元である文藝春秋の小説誌に連載された長編。地の利を活かして(?)候補作の社内選考から直木賞決定までの段取りを異様に細かく描写するばかりか、文春の雑誌はすべて実名。編集者たちも、文春の社員に限っては、ほぼ実名で登場する。口調までそのままなので、声が聞こえてきそうです。

 文学賞贈賞パーティの二次会や文壇バーの片隅でひそひそ語られる数多のゴシップが作中に自然にとりこまれ、この作家やこの事件のモデルは……とあらぬ想像が広がる。しかし、そういう下世話な興味でどろどろしたダークな楽屋話をどんどん読み進めていると、物語は意外にも、針の穴を通すような絶妙のコントロールで感動的な結末にたどりつく。無理無体な要求ばかりする無茶な作家に見えても、天羽カインは(それに担当編集者も)、いい小説を世に出したいという欲望に突き動かされている。きれいごとではないからこそ胸を打つ、生々しくて恐ろしくて最高に熱い小説賛歌だ。

新潮社 週刊新潮
2025年2月13日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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