『光さす杜の声を聴く』
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『光さす杜の声を聴く』逸見祥希写真集
[レビュアー] 読売新聞
地面をはうように横たわり、黒光りする太陽光発電施設が、自然豊かな山林や田園の風景に違和感を醸し出す。
2023年の写真・映像作家の登竜門「GRAPHGATE」で、グランプリを受賞した30歳の新鋭の初写真集。山梨県北杜市や故郷の青森県で、ドローンからソーラーパネルが並ぶ風景を撮影した。
逸見さんは、再生可能エネルギー開発との共生を研究テーマにする社会学者の卵でもある。東日本大震災後に急増しているメガソーラーは、脱炭素といった利点だけでなく、反射光や景観破壊など負の側面もあり、住民トラブルも珍しくない。現地を調査するたびに思い知るという。
朝日を浴びてきらめき、青空や白い雲を映し、雪化粧もする。鳥の目で捉えたパネル群は、時間や天気、季節、地形など様々な環境で、色とりどりの表情を見せる。美しくさえある。
しかし、異物感はぬぐえない。再生可能エネルギーをめぐる割り切れなさと重なり合うようだ。静けさをたたえた写真は、そっと社会問題も提示している。(青幻舎、4950円)(睦)