『世界で一番美しい工具図鑑』セオドア・グレイ著/ニック・マン写真

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世界で一番美しい工具図鑑

『世界で一番美しい工具図鑑』

著者
セオドア・グレイ [著]/ニック・マン [写真]/高野倉 匡人 [監修]/武井 摩利 [訳]
出版社
創元社
ジャンル
工学工業/機械
ISBN
9784422500041
発売日
2024/12/13
価格
4,950円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『世界で一番美しい工具図鑑』セオドア・グレイ著/ニック・マン写真

[レビュアー] 遠藤秀紀(解剖学者・東京大教授)

 一目見て欲しくなる本だ。「何もこんなものまで写真にしなくても」と思う工具が、これでもかこれでもかと黒バックに浮き上がっている。

 ハンマー、やすり、レンチ、のこぎり……。みな、著者の収集品だそうだ。一点一点に、書き手の工具にまつわる思いや記憶が詰まっている。添えられている短文に、笑いあり、驚きあり、「しみじみ」ありなのだ。雑多な道具を個人の思いで並べても何も起きないはずなのだが、持ち主の執着がてんでんばらばらに各工具と反応し、爆発寸前である。

 量販品の新品もあれば、誰かが一生使い込み、職人の魂が宿っていそうなものもある。つまり、被写体には何の統一感もない。だが、どれもが物を作り、何かを成し遂げるための道具だという宿命が、底抜けの明るさを全頁(ページ)に運ぶ。

 言葉の意味からすれば、本当は「図鑑」ではないだろう。著者の工具への「随想」が視覚的熱を噴出した一書と考えればよい。一番美しい図鑑シリーズ、絶好調である。高野倉匡人監修、武井摩利訳。(創元社、4950円)

読売新聞
2025年2月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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