『老い方がわからない』門賀美央子著

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老い方がわからない

『老い方がわからない』

著者
門賀美央子 [著]
出版社
双葉社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784575319163
発売日
2024/11/20
価格
1,870円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『老い方がわからない』門賀美央子著

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

 一九七一年生まれだそうで、私から見ると一世代下である。五〇代のときは、私はまだ本書のタイトルにあるような困惑に直面していなかった。六〇代も半ばが近くなった今ではもう、何かというと困惑している。すぐ身体のあちこちが痛くなり、整形外科のお世話になる。風邪やインフルで寝込むと、回復までやたら時間がかかる。徹夜なんかしようものならゾンビになってしまう。

 それなのに、人間としてはちっとも成熟していない。年相応の落ち着きも、シニアだけが備えている(はずの)世間知もない。老いたらみんな賢者になれるんじゃなかったの?

 老害と呼ばれず、アンチエイジングにしがみつかず、本書に例としてあげられているミス・マープルみたいに格好よく老いていきたい。でも、「家族」という機能を前提につくられている現代の社会システムのなかで、老いて一人になってゆく、あるいは一人で老いてゆくことは、どちらも難しい。本書は災害予測と同じように怖い本だ。ただ、来るかもしれないし来ないかもしれない災害と違い、「老い」は必ずやってくる。(双葉社、1870円)

読売新聞
2025年2月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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