『老い方がわからない』
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『老い方がわからない』門賀美央子著
[レビュアー] 宮部みゆき(作家)
一九七一年生まれだそうで、私から見ると一世代下である。五〇代のときは、私はまだ本書のタイトルにあるような困惑に直面していなかった。六〇代も半ばが近くなった今ではもう、何かというと困惑している。すぐ身体のあちこちが痛くなり、整形外科のお世話になる。風邪やインフルで寝込むと、回復までやたら時間がかかる。徹夜なんかしようものならゾンビになってしまう。
それなのに、人間としてはちっとも成熟していない。年相応の落ち着きも、シニアだけが備えている(はずの)世間知もない。老いたらみんな賢者になれるんじゃなかったの?
老害と呼ばれず、アンチエイジングにしがみつかず、本書に例としてあげられているミス・マープルみたいに格好よく老いていきたい。でも、「家族」という機能を前提につくられている現代の社会システムのなかで、老いて一人になってゆく、あるいは一人で老いてゆくことは、どちらも難しい。本書は災害予測と同じように怖い本だ。ただ、来るかもしれないし来ないかもしれない災害と違い、「老い」は必ずやってくる。(双葉社、1870円)