『定年後の超・働き方改革』
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定年後の人生で悩む人へ 医者が指南する働き方とは?
[レビュアー] 落合博(Readin' Writin' BOOK STORE 店主)
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落合博・評 『定年後の超・働き方改革』和田秀樹[著]
東京メトロ銀座線田原町近くの路地に新刊を扱う本屋を構えて今年4月23日で丸8年になる。2017年3月いっぱいで新聞社を辞めた時は58歳だった。当時息子は3歳で、看護師としてフルタイムで働く17歳下の妻は定年後も僕が嘱託社員として会社に残ることを希望していた。
読書家ではなく、本屋は夢でもなかった。ただ、本に囲まれた空間は心地よく感じていた。職場と自宅にある蔵書を並べた古本屋でもやろうかと考えながら、仕事の合間に個人が営む本屋を回って店主に質問したり、起業セミナーや本のトークイベントなどに通ったりしていた。取材みたいなもので、オープンまで2年くらい時間をかけた。
本書の著者、和田秀樹さんは、この選択と準備をどう評価するだろうか?
新聞記者と本屋は畑違いの業界のように思われる。だが、新聞記者は接客業でもあるというのが僕の持論で、初対面の人と話すのは苦ではないどころか、むしろ得意だし、楽しい。記者になって、どんなことにも興味を持ち、面白がれるように性格は変わった。本屋の経験はなくても、30年以上の記者経験は仕入れ(選書)にはプラスに作用している、はず。
シニアの強みは年金であることを痛感している。「年金と月収10万円台で考えれば選べる仕事はグッと広がる」と著者が書いているのはその通り。会社員時代より稼ぎが悪くても心配していない。幸い我が家には妻という大黒柱もいる。
そもそも本屋はもうからない。本の粗利は20%~30%程度。大手資本は参入しない。だから僕のような商売未経験者が低空飛行ながら続けられているというわけ。著者が挙げる「高齢者の『好き』を生かせる仕事」「定年後も働きやすい四大職業」には含まれていないが、シニアにとって本屋は狙い目なのだ。
週休2日。店を開けるのは12時で、18時にはシャッターを下ろす。毎日が時短営業だ。帰宅して家族3人で夕食をともにするのが何よりの楽しみになっている。人に会いに行く仕事から人が来てくれる仕事への転換は今のところ成功と言っていい。
でも、いつまでも本屋を続けるわけにはいかない。今年11月には67歳になる。何があってもおかしくない年齢だ。血圧が高いのが気がかり。本屋をやりたいという人が現れれば、バトンを渡したい。
「どうせいつかは死ぬのであれば、命が続く限りは楽しく」(あとがき)。僕もそんな心持ちで、カウンターに立っている。