『文士が、好きだーっ!!』
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『文士が、好きだーっ!!』坂上友紀著
[レビュアー] 鵜飼哲夫(読売新聞編集委員)
堀辰雄の初期作を読み、「BL(ボーイズラブ小説)やないかーい!」と驚き、「ゴリ」と呼ばれた室生犀星の感性に「かわいいやないかーいっ」と叫ぶ。そして、ハニカミ笑顔の井伏鱒二の写真に「ウフフ」となる……。「好きな文士は?」と聞かれたらエンドレスにしゃべり続けるという書店主が、6作家への偏愛を、軽やかに、かつ熱くディープに語る文学案内である。
小説にはまる→その作家の随筆、書簡も読み、書いたひとへの興味をかきたてる→交流のあった作家にも手を伸ばす。そうしてつながった綺(き)羅(ら)星(ぼし)が犀星、堀、芥川龍之介、立原道造ら6人である。手紙によく「ようござんす」と書いていた芥川、24歳で亡くなる間際、知人に「五月のそよ風をゼリーにして持って来て下さい」と語った立原の逸話など豆知識も満載する。ロシア文学の名翻訳で知られ、堀とは旧制一高時代から友人だった神(じん)西(ざい)清の章では、あまり知られていない彼の小説の魅力にも迫る。
つい紹介されている作品を読みたくなり、手を伸ばし、本書を読了するまでかなり道草を食った。それは再発見が楽しい寄り道だった。(晶文社、1870円)