『坂 茂スケッチ集』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
『建築家・坂茂 スケッチ集』坂茂著
[レビュアー] 読売新聞
側面や真上から建物を透視したかと思えば、柱の継ぎ目など要となる構造をクローズアップし細部を描写する。世界的建築家の坂(ばん)茂(しげる)さん(67)が40年間描きためた建築作品のスケッチを、約400ページにわたり紹介した。
転機となったフランスのジョルジュ・ポンピドゥー国立芸術文化センター分館や「世界で最も美しい美術館」に選ばれた下瀬美術館(広島県大竹市)などが続く。数々の名建築の始点となった手書きのスケッチは<建築のフォームを作る前に、構造の素材やシステムを考え、構造のディティールを考えます。形はそのシステムに適したフォームが自然に生まれます>との極意を、目に見える形で示している。
スケッチの多くを、実はコピー用紙の裏面に描いていたエピソードも坂さんらしい。<真新しい紙に描くより、“もったいない”と思わず躊(ちゅう)躇(ちょ)なく描ける>。あふれ出す創造性の源にある建築家の精神にもふれられる。(光村推古書院、2750円)(竹)