「10万円」は高い?安い?──本当に価値あるお金の使い方とは

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教養としてのお金の使い方

『教養としてのお金の使い方』

著者
午堂 登紀雄 [著]
出版社
日本実業出版社
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784534061591
発売日
2025/01/24
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】「10万円」は高い?安い?──本当に価値あるお金の使い方とは

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

お金は多くの問題を解決できる万能ツールですが、使い方によっては「生き金」になることも「死に金」になることもあり得ます。だからこそ大切なのは、死に金を減らし、生き金となるお金の使い方を実践するための手段を学び、人生を豊かなものにすること――。

教養としてのお金の使い方』(午堂登紀雄 著、日本実業出版社)の著者は前書『頭のいいお金の使い方』において、そんなメッセージを投げかけていました。

注目すべきは、続く本書においてはさらにもう一歩踏み込んでいる点です。「自分の考えところなる主義主張に触れることは、自分の価値判断基準を見なおす契機になる」という観点に基づき、「読者の価値判断基準を揺さぶる」試みをしているのです。

たとえば大学教育などでよく聞く一般教養は「リベラルアーツ」とも呼ばれ、これは「自由への技法」つまりさまざまな束縛から解放され自由に生きるための技術でもあります。

固定観念や先入観などにとらわれると、自由な発想や物事の深い理解、あるいは応用ができなくなるためです。

そこで本書でも「自分の思考の枠を超え、お金を使うことで認識できる世界を広げていく」材料の提供に注力しました。(「はじめに」より)

当然ながらベースになっているのは著者自身の考えなので、なかには「それは違うのではないか?」「自分はそうは思わない」と感じる部分もあるかもしれません。

しかしそういった思いは、部分的にでも共感できる考えを取り込んでみたり、もっとよい別の方法を編み出してみるなど、さまざまなことを試してみることにもつながっていくはずです。

つまり疑問を持つことは、「自分の思考の枠を越えるチャンス」でもあるわけです。そして、そのようなプロセスを踏んで得た教養は、より戦略的なお金の使い方を考える土台にもなるに違いありません。

そうした考え方を踏まえたうえで、きょうは第2章「お金を使って人生を豊かにする」に注目してみることにしましょう。

「10万円」は本当に高いのか?

「10万円です」と聞いて高いと思うか安いと思うか。

これは人それぞれですが、モノの価値は絶対額の大きさではなく、自分が得たものの大きさで決まるものです。

払った金額以上に自分が求めるものが得られたなら、それが100万円であろうと1000万円であろうと安い。そうでないなら1円でも高い。(60ページより)

つまり、最初の段階での金額の大きさだけではなにも判断できないということ。そのあとの累積効果まで考慮して初めて、高いか安いかがわかるわけです。その証拠に、値札を見て短絡的に高いか安いかを判断してしまうと、チャンスを逃したり、逆に不要なものまで買ったりしてしまう可能性があります。

値札に惑わされないためには、想像力を働かせることが重要なのです。具体的にいえば、「自分はそれを使いこなせるのか」「いまだけではなく将来はどうか」など、どのくらいのものが得られるのかを想像し、考えてみることが大切だということ。

未来を想像し、複数のシナリオを描き、それによって判断しようとする姿勢が、本当に大切なものを見つけ、金額が高くても躊躇なく財布を開ける自分をつくるのではないでしょうか。(63ページより)

たしかにこれは、お金と接するうえでとても大切な姿勢であるといえそうです。(60ページより)

「時間の価値」と「お金の価値」を理解する

どこかへ旅行しようというとき、「家族全員の新幹線代を払って出かけるより、たとえ渋滞につかまったとしてもクルマのほうが安上がりだ」と考える人もいれば、「新幹線だと小さな子どもが騒いだりして大変だし荷物も多いから、クルマのほうがラク」だと考える人もいるでしょう。

あるいは、「旅費が高くついたとしても、新幹線を使えば道中で本を読むなり仕事をするなど時間を有意義に使える」「新幹線ならクルマよりも移動の疲れが小さいし、事故の心配も少なそうだから安心」などと考える人もいるはずです。

いいかえれば、その人なりの尺度があるわけです。

そこに自分なりの合理性、つまり自分の時間とお金の価値を理解したうえでの判断を積み重ねていけば、納得性の高い生き方につながります。

しかし、ただ「お金がもったいないから」という理由だけで自分の時間を投入するのはもったいない。なぜなら、その時間を使えばできたはずのほかのことができなくなるからです。

逆に、ただ「面倒くさいから」という理由だけでお金を払うとしたら、それももったいない。なぜなら、そのお金があればできたであろうほかのことができなくなるからです。(64〜65ページより)

また、自分の時間の価値、そしてお金の価値は状況によっても変わるものです。たとえば砂漠の真ん中では、お金よりも水のほうが価値があるのではないでしょうか。

上記の新幹線の話で考えてみましょう。

仕事を多く抱えている状況での出張であれば、「集中できる環境」が得られるという意味ではグリーン車に乗ることが合理的になるとも考えられます。一方、出張からの帰りにビールを飲みながら疲れを癒そうということであれば、普通席でも十分でしょう。

このように、時間のほうが重要な局面もあれば、お金のほうが重要な局面もある。つまり「いまの自分の時間の価値・お金の価値」は一定ではなく、状況に応じて変わるということです。(66〜67ページより)

自分の時間を使ってお金を節約するのか、お金を使って時間を買うのか。どちらの判断が合理的なのかを考えることは、生活の全方位に影響するということ。長い目で見れば、人生を決定づけることにもなるわけです。(64ページより)

円安、インフレ、金利上昇など、個人を取り巻く経済環境は決してよいとはいえません。しかし、「ピンチはチャンス」ともいわれるように、視点を変えれば機会を創出しやすい環境でもある――。そうした考えに基づいて多くの“ヒント”を紹介している本書は、人生を有利に展開するために役立ってくれるかもしれません。

Source: 日本実業出版社

メディアジーン lifehacker
2025年3月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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