『成果を上げるプレイングマネジャーは「これ」をやらない』
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【毎日書評】 定期的な1on1がもたらす4つの弊害。プレイングマネージャーがやめたらいい仕事
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『成果を上げるプレイングマネジャーは「これ」をやらない』(中尾隆一郎 著、フォレスト出版)の著者によれば、プレイングマネジャーには「6つの圧力」がかかっているのだそうです。
① プレイング業務の増加
② タイムマネジメントの厳格化
③ 新業務増加への対応
④ 上司の無理あるいは曖昧な要望
⑤ メンバーへの対応の高度化
⑥ 本人のマネジメント力不足
(「はじめに プレイングマネジャーを『無理ゲー』から救う方法」より抜粋)
では、どうすればよいのか? 「無理ゲー」を解決するためには、私たちが当たり前にやっている常識を疑う必要があるのだと著者は主張しています。
◎私たちが当たり前やっていることを❶「やめる」
◎私たちが当たり前やっていることを❷「絞る」
◎私たちが当たり前やっていることを❸「見直す」
(「はじめに プレイングマネジャーを『無理ゲー』から救う方法」より)
そこで本書において著者は、これらの概念をプレイングマネジャーの視点から具体的に掘り下げ、独自のノウハウを提示しているのです。
きょうは第3章「プレイングマネジャーが『やめる』べき仕事とは?」のなかから、「『定期的な1 on 1』がもたらす4つの弊害」という項目をクローズアップしてみたいと思います。
「定期的な1on1」をやめる
著者はここで、「定期的に実施している1on1」あるいは「1on1ミーティング」と呼ばれているものをやめようとアドバイスしています。
ご存知のとおり1on1は、アメリカのシリコンバレーが発祥だとされている新しいコミュニケーション手段。導入している企業も多いでしょうが、「定期的な1on1」には4つの弊害があるというのです。
【「定期的な1 on 1」がもたらす4つの弊害】
弊害① 上司の仕事を増やす
弊害② 噂話で上司のモチベーションを低下させる
弊害③ チーム会議の活性化を阻害する
弊害④ 全体のコミュニケーションに時間がかかり、質が低下する
(107ページより)
それぞれの具体的なポイントを確認してみましょう。(102ページより)
「定期的な1on1」の弊害1:上司の仕事を増や
す
実際の1 on 1の場面を想像してみてください。
メンバーが自分の困りごとを説明します。メンバーは、その困りごとを上司に解決してもらえると思って相談します。
この瞬間に、問題を解決するタスクはメンバーから上司に移管されてしまうのです。(108ページより)
つまりこの時点で、上司であるプレイングマネジャーの仕事がひとつ増え、貴重な時間が奪われるということ。しかもそういった“移管された仕事”の多くは、本来であればメンバーが解決すべき仕事であったりもします。
また、1on1においてはクローズドな環境で対話が進むものであり、そこで聞いた内容の詳細を周囲に話せないこともあるでしょう。そのため「メンバーから聞いた話が事実かどうか」を確認するだけでも時間がかかってしまい、さらにプレイングマネジャーの貴重な時間が失われるというわけです。(108ページより)
「定期的な1 on 1」の弊害2:噂話で上司のモチベーションを低下させる
人は噂話を好むものですが、公の場でそういう話をすることは少ないかもしれません。ところが1on1の場合、「メンバーは本音を話してよい」「上司は部下の本音を把握する必要がある」というような“間違った前提”があったりもするもの。
そのような話を聞くと、弊害①と同様にプレイングマネジャーは人間関係などの配慮に対応しなければいけなくなり、確実に生産性が下がります。(109ページより)
噂話のたぐいは、聞いていて気持ちのよいものではありません。そのため、聞く側に立たされたプレイングマネジャーのモチベーションが下がってしまう可能性も。ひどい場合はメンタルに悪影響を及ぼすかもしれないだけに、気をつける必要があるわけです。(109ページより)
「定期的な1on1」の弊害3:チーム会議の活性化を阻害する
上記2つの弊害を放置すると、さらなる問題が出てくるようです。
1 on 1を定期的に行っていると、メンバーは「何か言いたいことがあっても、1 on1で相談をすればよい」と考え始めます。
すると、チームメンバーが集まる定例会議(チーム会議)で誰も発言をしなくなりがちです。つまり、定例会議が機能しなくなるのです。(110ページより)
相手はプレイングマネジャーだけで、率直な意見をいいやすいのが1on1。しかしチーム会議では多くの参加者がいるため、発言する必然性が下がってしまうことも考えられます。そもそも日本の企業では会議で活発に意見をぶつけあうことが少ないだけに、放っておくと誰も発言しなくなるのです。(110ページより)
「定期的な1on1」の弊害4:全体のコミュニケーションに時間がかかり、質が低下する
弊害3が進むとチーム会議が機能しなくなり、その結果、さらに多くの1on1が必要になるという矛盾が生じます。すると当然のことながら、プレイングマネジャーの生産性はどんどん悪化していくことに。しかも各人に対して個別に情報を伝える必要があるため、タイムラグも生じてしまうことになるかもしれません。
こうした理由から、会社や人事で1on1を上手に仕切ることが不可欠だということです。(111ページより)
Source: フォレスト出版