『脂肪と人類 渇望と嫌悪の歴史』イェンヌ・ダムベリ著

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脂肪と人類

『脂肪と人類』

著者
イェンヌ・ダムベリ [著]/久山 葉子 [訳]
出版社
新潮社
ジャンル
自然科学/自然科学総記
ISBN
9784106039218
発売日
2025/01/23
価格
2,200円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『脂肪と人類 渇望と嫌悪の歴史』イェンヌ・ダムベリ著

[レビュアー] 為末大(Deportare Partners代表/元陸上選手)

 それにしても脂肪はなぜあれほどうまいのか。脂肪は背徳の味と捉えられ、うまいが、なんだか体に良くなさそうだ。ただ、近年では人間が太る栄養素は糖質で、脂肪を食べても特に太らないと言われている。

 著者は北欧のフードジャーナリストで、人類がいかに脂肪を求め、嫌悪し、翻(ほん)弄(ろう)されてきたかをあらゆる角度から論じている。

 中世のヨーロッパでは断食中、肉、乳製品、卵が禁止されていたが、魚と植物油は許されていた。そのルールを策定した地中海沿岸諸国は良かったが、北欧ではその制限が困難で、一説には宗教改革が支持された理由の要因にもなったとされる。さらに罪を逃れるための免罪符の中にバター符があり、買えばバターを食べることが許されたそうだ。

 ところで、アスリートの体脂肪がよく話題に上がる。低ければ低いほど良いと思われがちだが、5%以下に落とした時は、すぐ風邪をひいて練習どころではなくなってしまった。腹筋はくっきり割れていて見た目は良かったが、低すぎる体脂肪は足を速くするには不都合だった。久山葉子訳。(新潮選書、2200円)

読売新聞
2025年3月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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