【中学受験】「6年生は過去問中心」「苦手教科の勉強量を増やす」親がやりがち“NG行動”と受験算数の“学年別コツ”

インタビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

10万人以上を指導した中学受験塾 SAPIXだから知っている算数のできる子が家でやっていること

『10万人以上を指導した中学受験塾 SAPIXだから知っている算数のできる子が家でやっていること』

著者
佐藤智 [著]
出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン
ジャンル
社会科学/教育
ISBN
9784799331026
発売日
2024/11/22
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【中学受験】「6年生は過去問中心」「苦手教科の勉強量を増やす」親がやりがち“NG行動”と受験算数の“学年別コツ”

[文] 佐藤智(教育ライター)


新学期に一年のスタートを切るために、気を付けるべき学年ごとの注意点

今年も桜が咲き誇り、子どもたちが新学期を迎える季節となりました。

また、小学生のお子さんをお持ちの方が、中学受験を見据えた準備を考え始める頃でもあります。既に受験を視野に入れて通塾中のご家庭でも、進級後の勉強計画を練っているのではないでしょうか。

中学受験の勉強法において「6年生になったら志望校の過去問中心に勉強する」とか、「弱点を克服するために苦手教科の勉強量を増やす」という話を聞くこともあるかもしれません。 しかし、こうしたものの中には、実は気を付けなければいけない“NG行動”があるそうです。

難関校への合格実績で有名な進学塾大手「SAPIX(サピックス)」で小学部算数担当の広野雅明先生に、親が子を応援していく上での注意点や、学年ごとの算数学習のコツについて伺いました。

 ***

やみくもに「6年生は過去問中心」とするのはNG

――中学受験をしようと考えている場合、新6年生になったら、どんな学習に注意していけるとよいでしょう。

広野:中学受験を考えているお子様の保護者は、志望校により出題が違うので「~~ 中学校対策」のような特訓をすることが合格への近道と考えてしまいがちです。もちろん、ここまでの学習で基礎学力が十分で苦手分野が残っていないお子様であればそのような特訓をすることで実力が伸びる可能性があります。

しかし、基礎学力が不十分なお子様の場合は、まずは各単元の基礎を再復習することが有効です。また、入試問題は学校ごとに出題形式や解答形式には差がありますが、算数として要求される学力には実はあまり差がないのです。基本的なことをおさえていったうえで、最後の味付けとして志望校対策が求められます。基本をおさえていない状態で過去問などを解いても、あまり意味はありません。過去問などの練習をして、その問題は解けるようになったとしても、基本が定着していないと少し切り口が変わると途端に解けなくなってしまうことがよくあります。

――5年生以降に重要になることはどんなことでしょうか。

広野:4年生では頭の中だけで考えて答えが出るような問題が多いのですが、5年生以後は徐々に問題が複雑になります。さらに6年生になるとかなり文章が長い問題や表やグラフなども含む複雑な問題が増えていきます。そのため、5年生以後では頭の中で考えるだけではなく、筆算や式、図などを実際にかいて解き進めることを習慣化していくことが大事になります。

4・5年生での学習のポイントとは?

――6年生の手前である、4・5年生は算数の学習においてはどういった意味合いを持つ時期なのでしょう。

広野:多くの塾の受験カリキュラムは4・5年生の2年間で算数の一通りの分野を学習していきます。塾では4年生から受験型のカリキュラムになっていきます。サピックスでは1学期に学習したことを夏期講習で復習し、2学期で学習したことを冬期講習で復習し、4年生で学習した内容を再び5年生で学習するなど同じ内容を何回か繰り返し学習し、定着させていく螺旋型のカリキュラムが組まれています。

――4年生と5年生での学習内容の違いはありますか。

広野:4年生までは、具体的なものや身近なものを素材とする問題が多いです。つるかめ算、過不足算、消去算などの「特殊算」 を学習します。平面図形や立体図形も、実際に面積や体積を求める問題が大多数。比較的イメージしやすいものが素材として出されています。

それに対して、5年生になると少しずつ抽象的な概念を要する問題が出てきます。5年生の途中から、割合や比、速さ、相似形や面積比などの入試でも頻出の分野を学習します。

――こうした学びが6年生での複雑な問題を解く力につながっていくのですね。

広野:そうです。単純な「特殊算」自体は難しいものではありません。ただ、6年生になり、問題が長文になって複雑化したときに、条件を整理していくと最終的には4・5年生で学習した解き方がポイントになっていることがよくあります。

苦手教科で「弱点を克服」するために「勉強量を増やす」は正解?

――高学年になるにつれて、勉強の負荷が増えていくかと思います。子どもへの負担を心配するご家庭も多いのではないでしょうか。

広野:たしかに、学年が上がるごとに通塾日数も授業時間も課題の量も増えます。そのため、慣れるまでは大変です。例えば、サピックスでは6年生になると授業時間が1時間のびて、17時〜21時になります。そのため、最初のうちは授業中に「早く終わらないかなぁ」という顔をしている子もいます。

しかし、数ヶ月経つと慣れていくものです。周囲の子どもたちと一緒に勉強しているうちに、次第にあたりまえになっていくのだと思います。

――「弱点を克服したい」という思いから、勉強量を増やすケースもありますか。

広野:子どもが「算数が苦手だ」となると、「ひたすら算数の勉強だけをさせなければ」と思ってしまう保護者もいらっしゃいます。しかし、苦手教科は長時間の勉強を強いられればますます嫌いになっていきます。そして、嫌いになれば一層苦手意識が強まります。この悪循環は避けたいところです。

結局のところ、入学試験の合否は各教科の合計点で決まります。苦手教科ばかりに時間をとって勉強自体のモチベーションが下がっては元も子もありません。算数だけでなく、全体の勉強のなかで子どものよさを認めて、意欲を高められるような声かけや接し方をしていくことがおすすめです。

ディスカヴァー・トゥエンティワン
2025年3月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

ディスカヴァー・トゥエンティワン

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク