「美の圧力」がものすごい韓国で「K-POPアイドルになった日本人」が感じた“変化”とは?“欠点”だった「そばかす・ホクロ」のタトゥーまで登場

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美人までの階段1000段あってもう潰れそうだけどこのシートマスクを信じてる

『美人までの階段1000段あってもう潰れそうだけどこのシートマスクを信じてる』

著者
エリース・ヒュー [著]/金井 真弓 [訳]/桑畑 優香 [監修]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784105074418
発売日
2025/02/17
価格
2,420円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

韓国でそばかすやホクロを取りたい?その前に本書をお勧めします

[レビュアー] 高田健太(日本人K-POPアイドル)


高田健太さん

 12歳から16歳までの娘がいる韓国の母親の4人にひとりが、娘に美容整形を勧めたことがある。2020年の韓国ギャラップの世論調査では、19歳から39歳までの女性の3人にひとりが美容整形を受けたことがあるという。同調査によると、労働市場でのチャンスを高めるためなら美容整形を受けると答えた男性は59%だという……。

 このデータを見た日本人は、信じられないと驚嘆するだろうか。それとも、日本の数年後を表すものと思うだろうか。これらのデータを詳しく伝えるのは、『美人までの階段1000段あってもう潰れそうだけどこのシートマスクを信じてる』(新潮社)だ。NPR(米国公共ラジオ放送)の海外特派員として2015年に韓国・ソウルに赴任したアジア系アメリカ人のエリース・ヒューさんが、自身の心境の変化も含めて美容大国となった韓国の様子を伝える著書である。

 同書を読み、韓国における「美の圧力」に共感するのが、20歳で韓国に渡り、K-POPアイドルとして日韓で活動する高田健太さんだ(「高」は「はしごだか」)。現役の男性アイドルである高田さんの書評で、韓国の今をお伝えしよう。

***

 同書では、ソウルに4年間赴任したアメリカ人女性記者が、美容にまつわる現地での体験を赤裸々に明かしています。例えば、そばかすだらけの自身の顔を見た韓国人はこう言うだろうと書いています。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお、チュグンケ(そばかす)!」

「そばかすが気に入っているって? それは韓国の考え方ではないね」

「あなたは〔ここに皮膚科クリニックの名を入れる〕を知っていますか? あそこなら取り除いてくれます」

 アメリカでチャームポイントとされるそばかすは、韓国では「美しくないもの」「取り去るべきもの」だったわけです。

 じつは僕がソウルに渡ったのも著者と同じ2015年でした。何とか事務所に所属して、デビューに向け練習を重ねるなか、僕は八重歯の矯正を考え始めました。なぜなら、ひとつ上の世代のアイドルには八重歯なんてありえなかったからです。

 誰もが真っ白くて整った歯並びで、鼻は高く、綺麗な肌。女性だったら目はぱっちりの二重。その人が努力で勝ち取った「歌」や「ダンス」の上手さ以前に「容姿」があって、低身長というだけで落とされていました。

 そして、アイドルなら肌の“管理”をちゃんとすることは、暗黙の了解でした。会社がメンバー一人ひとりに対し、月に何十万円というお金を掛けて“投資”していることを知っているからです。

 僕らも、人前に立つ身ですし、完璧なほど容姿が整った存在でいなければならないのだと受け入れていました。

 ですが、そんな韓国でもいまやStray Kidsのフィリックスさんがそばかすを、TWICEのMINAさんが特徴的なホクロを活かしてメイクし、その美しさに熱狂するファンが存在します。そして、そばかすやホクロを入れるタトゥーまで出てきました。

 この本にも書かれているように、韓国の「こうなるべき」という美の圧力はものすごく強くて、そして今も変化し続けています。

 だからこそ、そんな規範に呑まれる前に、自分自身と深く繋がり、たとえ欠点があったとしても価値があると思えるような可能性を、見つけて欲しいと思います。

新潮社 週刊新潮
2025年4月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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