最短で答えにたどり着く「絞り込み思考」は、なぜ万人に効くのか?

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「制約」を使って最短で答えを出す! 絞り込み思考

『「制約」を使って最短で答えを出す! 絞り込み思考』

著者
山岡俊樹 [著]
出版社
あさ出版
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784866677156
発売日
2025/01/28
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】最短で答えにたどり着く「絞り込み思考」は、なぜ万人に効くのか?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

タイトルからもわかるように、『「制約」を使って最短で答えを出す! 絞り込み思考』(山岡俊樹 著、あさ出版)は、「絞り込み思考」という思考法について解説した書籍。

聞き慣れないことばかもしれませんが、「絞り込み思考」とは無限にある情報のなかから「制約」というフィルターを通して絞り込んでいき、テーマや問題の答えを最短で効率的に導き出す思考法なのだそうです。

実践すれば、「より短い時間で答えを出せる」「問題の全体像がクリアになる」「判断ミスがなくなる」「最後までコンセプトがぶれずにゴールへたどり着ける」「繰り返すことで最適解を導くことができる」といった効果が望めるようです。

著者は、長年にわたってデザインと人間工学を専門にし、企業と大学でデザインや製品開発に携わってきたという人物。そんななか、よりよい製品を開発するためには、時代の流れや社会の視点などから製品の本質を考えていくマクロ的なアプローチの必要性を実感してきたのだとか。

そしてそのためには、マクロな視点から、「目的」や「コンセプト」を徹底的に考えることが大切だということに気づいたのです。

こうしてたどり着いたのが、制約を使って絞り込んでいく「絞り込み思考」です。(「はじめに」より)

「目的」や「コンセプト」という制約に基づいて情報を絞り込んでいけば、最後までブレることなく、最短で答えを導き出すことが可能になるそう。しかも製品開発のみならず、発想、意思決定、プレゼン、問題解決、人間関係の問題など、幅広い分野で応用できるのだといいます。

そこで1章「なぜ、絞り込み思考が必要なのか」に焦点を当て、基本的な考え方をさらに確認してみたいと思います。

絞り込み思考とはなにか

意識的であれ無意識的であれ、私たちは日常的に数多くの絞り込みを行っているもの。このことについて、著者はカフェを選ぶ際の解決案(どのカフェに行くか)を引き合いに出して考えています。たとえば解決案として考えられるのは、次のようなもの。

① コーヒー1杯の値段は400円、場所は現在地から徒歩5分、人は少ないが席が狭い店

② コーヒー1杯の値段は600円、場所は現在地から徒歩10分、いつも人が多い店

③ コーヒー1杯の値段は800円、場所は現在地から徒歩5分、人は多いが、席も多く広々としている店

(19ページより)

安いコーヒーがいいということが目的なら、正解は①ということになるでしょう。しかし実際には、価格以外にも目的がある場合が少なくありません。

たとえば、「カフェには1時間後の打ち合わせまで滞在する」「仕事をしたいので、ゆっくりできる場所がいい」「現在地からなるべく移動したくない」など。

いいかえれば、こうした自分のニーズを満たすカフェはどこかと考えたとき、おのずと答えが導き出されるわけです。こうした“従来行われている試行錯誤を伴う効率の悪い絞り込みの作業”を、より効率的にしたのが「絞り込み思考」

この方法さえ身につければ、どんなテーマや問題であっても、目的にあった最適な答えを導き出すことができるそうです。(18ページより)

絞り込みは制約に沿って行う

私たちが日常的に行っている絞り込みのなかで、指針となるのが「制約」。たとえば上記の「カフェを選ぶ際の目的」は、“カフェを選ぶ際の「制約」”ということになるわけです。つまり絞り込み思考では、制約に沿って絞り込みを行っているのです。

なお、数ある制約のなかでもっともシンプルなものが目的。このことを、東京から大阪に出張する場合の交通手段で考えてみましょう。

① 自動車

② 新幹線

③ 鈍行電車

④ 飛行機

⑤ 夜行バス

⑥ 船

⑦ 徒歩や自転車(現実的ではありませんが)

(25ページより)

このように、さまざまな方法が考えられます。そしてこうした意思決定の際、私たちは自分が置かれている状況(使える時間、費用、体力など)から「目的」を決め、最終決断をします。そこからもわかるように、制約に沿って考えることは、絞り込みを行ううえで必要不可欠なのです。(24ページより)

他の思考法との違い

では絞り込み思考は、デザイン思考やシステム思考、水平思考などとどう違うのでしょうか?

デザイン思考は、現場でモノ・コトと人間との関係を中心に観察を行い、そこから得た気づきに基づいて、なにかをつくったりアイデアを出したりする思考法です。よいアイデアが出たら、製品模型や操作画面などをつくり、使い勝手や造形などを検討。さらには関係者から意見をもらい、改良していくわけです。ただしデザイン思考を行うには、相応のトレーニングが必要となります。

システム思考は、問題の全体をとらえて関係性を読み解き、論理的に解決案に落とし込む思考法。プロセスこそ絞り込み思考のそれと似ていますが、全体をとらえるため数多くの要素について考える必要があるため難しく、時間もかかります。

そして水平思考は、従来とは異なる視点から発想する思考法。柔軟に発想するため新たなアイデアが出る可能性がありますが、デザイン思考と同様に、個人の能力に依存する部分が多いといえます。

数学の問題を解く方法には、自分で解法を考えて解を求める鶴亀算と、手順に従って解を求める方程式がありますが、この観点から考えると、デザイン思考と水平思考は鶴亀算に近く、発想やアイデア出しが得意な人には良い方法です。

一方、システム思考と絞り込み思考は方程式に近く、慣れれば誰でも使えます。(32ページより)

とくに絞り込み思考は、制約を決めてどんどん絞り込んでいくだけで、簡単に最短で答えを導き出すことが可能。つまり、万人のための思考法といえるわけです。(30ページより)

本書を活用すれば、最適な考え方、さまざまな問題の解決法、アイデアの導き方などを身につけることができると著者は述べています。最短で最適解を導き出すようになるため、参考にしてみる価値はありそうです。

Source: あさ出版

メディアジーン lifehacker
2025年3月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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