『ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界』梶谷懐/高口康太著

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ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界

『ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界』

著者
梶谷 懐 [著]/高口 康太 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784166614813
発売日
2025/01/17
価格
1,210円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『ピークアウトする中国 「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界』梶谷懐/高口康太著

[レビュアー] 櫻川昌哉(経済学者・慶応大教授)

 不動産と一国の経済の関係は複雑に絡み合っていることが多く、そのかたちは国の経済の歴史を色濃く反映する。中国もまた例に漏れない。社会保障制度が十分に整備されていない中国では人々は貯蓄に励む。安心な老後を夢見て貯蓄はマンション購入に向かう。値上がりを前提とした不動産が年金制度の代わりとなっている。

 税収不足に悩む地方政府は、不動産ビジネスで歳入を増やそうとする。農地を安く買い上げて不動産業者に高く売ってサヤを稼ぐ。土地公有を建前とする共産主義の姿はそこにはない。不動産バブルが制度の遅れと歪(ゆが)みを補ってきた現実を垣間見る。

 本書は、不動産バブルという切り口から、中国経済が抱える問題点を見事にえぐり出す。これほどまでに不動産と経済が深く絡み合っているとは……。

 中国の経済成長は不動産バブルとともにあったといえよう。同時に、この経済が崩れるとしたらきっと不動産からだろうと予想できてしまうようなゾッとさせる内容でもある。分析は丁寧であり、秀逸な中国経済論である。(文春新書、1210円)

読売新聞
2025年3月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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