「この斧(おの)にさ、〝やり一本で300もの敵をたおす勇士アフマド〟って彫ってくれない?」。村のお調子者、アフマドが鍛冶屋のおやじさんにこう頼んだ。「たおすのは人じゃなくて、ハエだけどね」。ちょっとした冗談からアフマドの運命が回り出し、やがて国の命運をも左右する展開に―。
イランの昔話。竹原新著『イランの口承文芸』に収録されたお話が元になっている。イスラム圏の装飾写本を思わせる絵は、古い細密画や石版画の資料などを参考に描かれており、読者を物語の世界に誘い込む。人物や動物のおちゃめな表情が味わい深い。(BL出版・1980円)

-
2025年3月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです
