『短歌の「てにをは」を読む』大辻隆弘著
[レビュアー] 産経新聞社
『短歌の「てにをは」を読む』大辻隆弘著
「五・七・五・七・七」の31字しかない短歌は、使われる「てにをは」といった助詞にも深い意味がある。宮中歌会始の選者も務める著者が、和歌における助詞の奥深い世界にいざなう。
例えば昭和を代表する歌人、宮柊二の「たたかひを終りたる身を遊ばせて石群(いはむらが)れる谷川を越ゆ」。なぜ「たたかひが」ではなく「たたかひを」なのか。背景には宮自身の歩みがあり、「を」に込められた深い思いが浮かぶ。
宮の師、北原白秋がある歌で「あけ方に」を「あけ方は」と添削したその効果など、一字たりともおろそかにしない精神が尊い。(いりの舎・1980円)