「値段に対して本の価値が…」副教材なのに要望が多すぎて一般販売も開始の「国語便覧」がバズったワケ

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

本来なら一般に出回らない「副教材」がバズるワケは?

[レビュアー] 倉本さおり(書評家、ライター)


第一学習社『カラー版新国語便覧』

「値段に対して本の価値が高すぎる!」――目下SNSで話題のこのベストセラー、改めて手にとると確かに情報量が凄まじい。え、カラーでこの厚みで950円? しかも自分が学生時代に使っていたものよりずいぶん親切なつくりになっているような……?

 今回取り上げるのは第一学習社『カラー版新国語便覧』。便覧――教科書でも問題集でもない、ロッカーに置きっぱなしだったという人も多かろう、分厚くて重たいアレである。

 そもそも国語便覧や資料集のような、教科書会社が発行する副教材は学校専売であることが多く、本来なら一般に出回らない。本書が例外的にオンラインショップでの販売に至ったきっかけは、web上のとある記事が今年に入ってバズり、「読みたい!」という声が数多く寄せられたからだ。

「【編集は語る】第一学習社 国語課のディープな座談会『国語便覧』」と題されたそのコラムでは、それぞれ現代文・古文・漢文を専門とする若手編集者たちが、自らが思う国語便覧の“推しポイント”について全三回にわたり情熱をぶつけ合う。教材としての特長の解説に加え「文学とメディアミックス」という便覧内の特集ページに関連した人気ゲーム談義もあり、純粋に“読みもの”として面白いコラムになっているのだ。

 この便覧は「業界初の完全デジタル化」という点も見逃せない。教員が授業で用いる素材としてではなく、学習者が自分で使えるような形で電子書籍にしたのは画期的な試みだった。

「重い教材を持ち運ばず、家でも学校でも同じ情報にアクセスできるのは大きなメリットと言えます。また、本文テキストの検索機能、関連するウェブサイトへのリンク機能などデジタル独自の機能にも注目していただきたいです」(編集担当者)

 他にも各版元が推薦する「文庫と新書」のコーナーや「主要評論テーマの変遷」など、大人が読んでも好奇心をくすぐられる特集がこれでもかと詰まっている。

「国語の勉強に役立つのはもちろん、大人になってからも、読書のきっかけ、学び直しの素材としてなど、多くの気づきを与えてくれる存在だと思います」(同)

新潮社 週刊新潮
2025年4月17日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク