『列島縦断 日本の墓 失われゆく墓石を訪ねる』関根達人著

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

列島縦断 日本の墓

『列島縦断 日本の墓』

著者
関根 達人 [著]
出版社
吉川弘文館
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784642084697
発売日
2025/02/03
価格
2,420円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『列島縦断 日本の墓 失われゆく墓石を訪ねる』関根達人著

[レビュアー] 遠藤秀紀(解剖学者・東京大教授)

 著者自らが本書を「お墓の写真集」と呼んでいるのだが、それは一種の謙遜だろう。確かに沢山(たくさん)の写真が掲載されてはいるが、「墓は人と社会を語る」という主題を歴史学と考古学から深く研究してきた学者による、緻密(ちみつ)に書かれた読み物である。

 墓と埋葬は弔いの実体であるとともに、各時代各社会の制度、規範、信仰、通念を継承する堅固な記録媒体である。頁(ページ)は、墓の歴史を十二世紀あたりから語り始め、大名を筆頭に近世の墓を詳しく扱いつつ、現代日本の死生観に近づこうとする。

 今日の墓は、墓石・寺・火葬のお骨という三拍子を想起させる。だが、それはかなり偏ったステレオタイプだ。実際には、埋葬の様式が各地域特異の風習を伝え、個々の墓は被葬者の家柄や地位を映しながら、形、大きさ、色、材質等のデザインによって、多様な弔いを表現している。

 墓を思慮するきっかけを与えてくれる本だ。人間が死別とどのように折り合ってきたか、一考する機会となろう。(吉川弘文館、2420円)

読売新聞
2025年4月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク