『新聞記者がネット記事をバズらせるために考えたこと』
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ネットで読まれない「新聞記事スタイル」
[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)
ネットのニュースプラットフォーム間の競争は、激化の一途だ。閲覧数を稼ぐため、中身と関係ない紛らわしいタイトルがつけられたり、間違ってタップしてしまいやすいデザインだったりということも増えた。
斉藤友彦『新聞記者がネット記事をバズらせるために考えたこと』のタイトルを見た時には、こうしたテクニックを紹介する薄っぺらい本かと思ってしまったが、全く違った。この時代に文章を書く人なら、必読というべき内容だ。
著者は共同通信社でデスクなどを務めた後、デジタルコンテンツ部門に異動した。そこで直面したのが、新聞そのままの記事が、ウェブ上では全く読まれないという事実だった。著者は読者にアンケートをとり、様々に試行錯誤した末、もはや新聞の文体はネット読者に全く受け入れられていないという結論に達する。
新聞記事のスタイルは、狭いスペースにできる限りの情報を詰め込もうとするものだ。これが、長文に慣れていないネットの読者にとっては、非常に読み辛いものになってしまっているという。こんな書き方も受け入れられないのかと思うような指摘も中にはあるが、現代の書き手としてはこの流れに適応していかねばならないのだろう。
もちろん、新聞の抱える問題点は文体だけではない。「書き方以前に、読者が『知りたい』と思っていることに本当の意味で応えようとしてこなかったからかもしれない」という著者の述懐が胸に残る。