『10の法則で読む くずし字入門』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
『10の法則で読む くずし字入門』根本知著
[レビュアー] 清水唯一朗(政治学者・慶応大教授)
あの流麗な筆字を読んでみたい。だが、古文も漢文も勉強したのに、習字もそれなりにがんばったのに、読めない。くやしい。
そんな思いを持ったことがある方は、ぜひ本書を手に取っていただきたい。著者は、大河ドラマ「光る君へ」で俳優陣に丁寧に書の手ほどきをした人である。その経験を生かして、本書では基本的な法則から、漢字五文字の禅語、ひらがなの混じる和歌とゆっくり順を追って教えてくれる。
恥を忍んで言えば、評者もくずし字には難儀してきた。学部時代に履修したクラスが合わず、自己流で取り組んできたツケは重い。一筆目の入り方から引く読解辞典、文字の崩し方が一覧できる用例辞典といつも首っ引きで困っていた。
書は書き手によるもの。読むときも書き手の目からみることを本書は教えてくれる。書き順を目で追い、筆の動きを考えることで、なぜそのくずしになるのかが理解できる。そのうえで筆の表現に注目し、書き手の気持ちに想(おも)いを寄せる。
行成さまとはいかずとも、まひろさまやききょうさま、いや道長さまには少し近づけるかも。(淡交社、1980円)