『考古学者だけど、発掘が出来ません。多忙すぎる日常』青山和夫/大城道則/角道亮介著

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考古学者だけど、発掘が出来ません。  多忙すぎる日常

『考古学者だけど、発掘が出来ません。  多忙すぎる日常』

著者
青山 和夫 [著]/大城 道則 [著]/角道 亮介 [著]
出版社
ポプラ社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784591184066
発売日
2025/02/13
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『考古学者だけど、発掘が出来ません。多忙すぎる日常』青山和夫/大城道則/角道亮介著

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

パワフル3先生 嘆き節

 充分に説明が行き届いたタイトルに加えて、帯の<「働き方改革」とは無縁な日々>という惹(じゃっ)句(く)のすごい説得力。私もこの本よみうり堂の読書委員会で大勢の大学の先生方とご一緒するようになって、大学教授がいかに多忙な職業であるのか知りましたが、それはアウトドア派の考古学の先生方でも変わらないのですね。

 まずエジプト考古学者の大城先生。大学院を含めて週に9コマの授業があり、それに加えて大学広報の仕事、全国各地の高校から依頼される出張授業、大学内委員会の仕事、それに付随する会議会議会議……これらの業務の間(かん)隙(げき)をついて海外調査へ出かける。二泊でとんぼ返りなんてこともあるそうな。忙しすぎる! もしかするとインディ・ジョーンズ先生が命がけのアクションばっかりやっていたのも、大学に戻るともっと大変だったからなのだろうか。

 次は中国考古学者の角道先生。おや、パートの冒頭に、インディ先生のような考古学者は実在しないの一文が。リアル考古学者は「書類片手に役所に通い、遺跡周辺の住民に挨(あい)拶(さつ)回りをし、学生や作業員さんたちの反乱を恐れ、調査予算の少なさを嘆き、出土した遺物の整理と報告書の執筆に忙殺される」という。は? 挨拶回りするんですか。学生さんが反乱を起こすのは、それだけの切実な理由があるのでは? 怖! 

 三番手、メキシコ・中米マヤ文明考古学者の青山先生は、青年海外協力隊の考古学隊員としてホンジュラスに渡ったことで、マヤ文明を研究するようになったのだそうだ。世界四大文明などと並び称される他の文明と比べて、マヤ文明には「大河のほとり」という条件も、「鉄器」「大型家畜」「統一王朝」も当てはまらない。その学問的な謎に魅了されているという。

 本書は、好きな道を驀(ばく)進(しん)している人たちの明るいオーラに包まれている。ページを繰ってそれを浴びながら、三先生のパワフルな嘆き節を味わいましょう。お疲れさまです!(ポプラ社、1760円)

読売新聞
2025年4月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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