『エクソシストは語る エクソシズムの真実』田中昇著

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エクソシストは語る エクソシズムの真実

『エクソシストは語る エクソシズムの真実』

著者
田中 昇 [著]
出版社
集英社インターナショナル
ジャンル
哲学・宗教・心理学/宗教
ISBN
9784797674590
発売日
2025/02/26
価格
2,530円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『エクソシストは語る エクソシズムの真実』田中昇著

[レビュアー] 東畑開人(臨床心理士)

 きわめて実務的なエクソシズム=悪魔祓(ばら)いの本である。悪魔が憑(つ)いているのか精神疾患なのかの鑑別の仕方や、実際に行われる儀礼の詳細に至るまで、誰でも(というのは嘘(うそ)だけど)悪魔祓いをできるように詳細な解説がなされている。

 しかも驚くべきことに、著者は現役の神父で、日本人である。日本において実際に依頼された悪魔祓いを描いた稀(け)有(う)な一冊なのだ。

 これだけですでに大傑作間違いなしなのだが、本書の特徴は単なる体験談でもなく、もちろんマニュアルでもなく、悪魔祓いの背景にあるカトリックの制度や信仰が説明されているところにある。悪魔はカトリックでは現役の存在で、悪魔祓いは法や手続き、資格が入念に整備されている。神を真剣に信じるならば、悪魔のことも本気で考えないといけないということだ。

 そう、本気なのだ。後半ではサラリーマンだった著者がなぜに神父になったのかが描かれている。それはまさに、この社会で信仰にはいかなる価値があるのか、いかにしたら本気の信仰になるのか。これこそが真の問題であったということだ。(集英社インターナショナル、2530円)

読売新聞
2025年4月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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