『内向型だからうまくいく「ひとり起業」5つのステップ』
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【毎日書評】内向型の人こそうまくいく「ひとり起業」を成功させるポイントは?
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
「起業家」と聞けば、多くの方はエネルギッシュでカリスマ性のある人をイメージされるかもしれません。しかし、中小企業診断士である『内向型だからうまくいく「ひとり起業」』(梶 純子 著、現代書林)の著者は次のようにいうのです。
1人でいることを好み、自己アピールを苦手と感じる内向型の人こそ、起業に向くと私は考えています。
現に、私のところに相談に来られた多くの内向型の人は、起業で自分の望む成功をつかみ、自分らしく生きていらっしゃいます。(「はじめに」より)
それは、コンサルタント業務に携わるなかで得た実感。内向型の人は、物事を深く掘り下げて考える傾向があり、厳密に分析ができるというのです。また、社会問題にも敏感で、顧客のニーズを的確に捉えられるという側面もあるそう。それが、新しいサービスを生み出す能力につながっているというわけです。
もうひとつ興味深いのは、「起業は内向型の人が抱えがちな悩みを解消してくれる」という指摘。内向型の人は人間関係のストレスに敏感ですが、起業することでストレスから解放され、自分の強みを生かした働き方ができるようになるのだそうです。
ところが社会的には、とかく外交的な人ばかりが評価されがち。そのため内向型の人が才能を発揮できないことを、著者はもどかしく感じてきたのだといいます。
そうした理由から生まれたのが本書。
ステップ①と②で、ビジネスモデルをつくります。
ステップ③で、最初のお客様を探します。テストマーケティングです。
ステップ④では、サービス・商品の価格を決めます。内向型の人がもっとも気をつけるべきポイントがここです。
最後のステップ⑤では、内向型の人が苦手意識を持つことが多い営業を回避できる集客術をまとめています。(「はじめに」より)
こうした5ステップに沿って解説されているため、順番に読み進めていくのがいいかもしれません。そのためここでは、基本的な考え方をまとめたPART6「内向型『ひとり企業』で、あなたらしくいられる『居場所』をつくろう」に焦点を当ててみたいと思います。
リピーターを固定ファンにしていくためのフォローとは
「ひとり起業」を継続させるために必要なのは、顧客と深いつながりを持ち、関係性を築いていくことだと著者。
新規のお客様からリピーターになっていただき、さらに固定ファンになってもらえれば、つながりはもっと深くなるでしょう。
1人のお客様との関係性を大切にしながら、長期にわたってつながり続けることを意識するようにしてください。
よほどのことがない限り、こちらから関係性を切ることは選ばないようにして、定期的に関わっていきましょう。(154〜155ページより)
関係性を育てることが大きなポイントになるわけですが、そのためには商品やサービスの購入後、どのようなフォローをするのかが鍵を握るのだといいます。著者が挙げている具体例を確認してみましょう。
・メールやLINEなどのデジタルツールを活用する
・手書きで手紙やハガキを書いて送る
・直接会う機会をつくる
・定期的に食事会やお茶会などを開く
(155ページより)
とくに、手書きの手紙は温かみが伝わる特別な手段だといえるそう。無理なく取り入れていくようにすれば、気持ちがお客様へと届く可能性が高くなるようです。
さらには、それぞれのお客様を「どのタイミングでフォローしていけばいいか」、めどをつけておくことも大切。リスト化するなどし、フォローのタイミングを見失わないように工夫をすることが大切だということです。(154ページより)
アドバイスをしてくれる人を2人、見つけよう
内向型の人が起業する場合、信頼できる相談相手を持つことも非常に重要だといいます。
内向型の人は、自分ひとりだけで考えていると、どうしてもネガティブな考えに傾いてしまいがち。もともと不安を感じやすい傾向があるため、無意識のうちに自分や事業に対して悲観的になっていることも少なくないわけです。しかし、自分の殻に閉じこもってしまうと、なかなか抜け出せなくなってしまいます。
だからこそ、ひとりで悩むようなシチュエーションに自分を置くのは避けるべきなのです。そして、そうならないためには、パートナーや仲間となる存在が必要だということ。
第三者に客観的な意見やアドバイスを求めることは、多くのメリットがあります。もっとも大きいのは、複数の人がアイデアや考えを出すことで、最良最善の決断にたどり着きやすくなることです。
これは外交型の人にもいえることですが、自分だけでできることなんて、たかが知れていると思いませんか? できるだけ多くの人に力を貸してもらいながら、事業を継続していきましょう。(157ページより)
また、思いや考えを話す相手がいると、事業内容の整理ができ、新たなアイデアが浮かびやすくもなるはず。なぜなら、人に話すことで気づけることも少なくないからです。(156ページより)
まずは気軽に、新たなコミュニティにも参加してみよう
内向型の人は、多くの人がいる場に参加することをためらいがち。しかし、ぜひとも勇気を出してコミュニティに参加してみるべきだと著者は述べています。そうすれば未知の世界を知ることができ、新たなチャンスを見つけることもできるから。
そのコミュニティでうまく立ち回る必要はありません。
どんな人がいて、どんな話に花が咲いているのかを確かめるだけでも得るものがあります。誰か1人でも知り合いができたらラッキーだという軽い気持ちで参加してみてください。(159ページより)
大げさに考えず、まずは行動してみるべきだということなのでしょう。(158ページより)
ほんの少しだけ視点を変えれば、働き方や生き方は大きく変わるはずだと著者は断言しています。すなわち、内向型でも自分の強みを発揮できるようになれるということ。本書を参考にしながら、自身の可能性を伸ばしてみるべきかもしれません。
Source: 現代書林