『行動経済学で「未知のワクチン」に向き合う』佐々木周作/大竹文雄/齋藤智也著

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行動経済学で「未知のワクチン」に向き合う

『行動経済学で「未知のワクチン」に向き合う』

著者
佐々木 周作 [著]/大竹 文雄 [著]/齋藤 智也 [著]
出版社
日本評論社
ジャンル
社会科学/経済・財政・統計
ISBN
9784535540743
発売日
2025/01/10
価格
2,420円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『行動経済学で「未知のワクチン」に向き合う』佐々木周作/大竹文雄/齋藤智也著

[レビュアー] 鵜飼哲夫(読売新聞編集委員)

 新型コロナから5年。ステイホーム、ソーシャルディスタンス、クラスターなど感染症と同様、瞬く間に広がった用語も日々記憶から遠ざかりつつある。

 あのなんともいえない窮屈で不安な日々は何だったのか。コロナ政策に関わった行動経済学者と感染症学者が、当時の政策の推移や実効性、世論の変化などを丁寧に拾い上げた本書は、とても誠実な記録である。

 今になってわかった結果をもとにした、もっともらしい意見は言わない。変異するウイルスの正体も未知のワクチンの効果もはっきりせず、国民に不安とデマが広がる中で、「試行錯誤」した過程が詳細に報告されている。命を守るための外出規制で高まった人々の抑鬱(よくうつ)、経済停滞など様々な論点も拾う。もしも次のパンデミックで、高齢者ではなく、子どもの死亡率・重症化率が最も高くなったらどうするのか、将来の課題にも向きあった。

 「備えあれば憂いなし」とはいえ、未知の災厄への完璧な備えは難しい。でも備えにより、憂いを減らすことはできる。本書は、未知におびえ、迷える人への道(みち)標(しるべ)にもなっている。(日本評論社、2420円)

読売新聞
2025年4月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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