『国境アトラス 世界の壁・移民・紛争の全記録』デルフィヌ・パパン/ブルーノ・テルトレ著

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国境アトラス 世界の壁・移民・紛争の全記録

『国境アトラス 世界の壁・移民・紛争の全記録』

著者
デルフィヌ・パパン [著]/ブルーノ・テルトレ [著]/グゼマルタン・ラボルド [著]
出版社
日経ナショナルジオグラフィック社
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784863136427
発売日
2025/03/21
価格
3,630円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『国境アトラス 世界の壁・移民・紛争の全記録』デルフィヌ・パパン/ブルーノ・テルトレ著

[レビュアー] 長田育恵(劇作家・脚本家)

 ベルリンで戦後四カ国に分割統治された跡を見た。チェックポイント・チャーリーは東西ベルリンの国境検問所だった。今は観光地となったその場で、突如として隔てられた生活や文化を想像した。

 国境とは何か。人為的に定められた線もあれば、河川や山脈、海中の大陸棚など自然に基づくものも。本書は国境に特化した興味深い一冊。国境紛争地帯から今築かれているフェンス、さらに今後アルプスの氷河が融解して引き起こすだろう国境問題など、精細な地図を伴う全71テーマで様々な国境を俯(ふ)瞰(かん)する。

 国境は線であると同時に空間でもある。いくら国を隔てても、民族や言語集団を明確に隔てることは出来ない。国境は緩衝地帯となる場合もあるが、そこでは人と文化が混ざり、時にぶつかりあう。地球に引かれた数々の境界線を眺めながら弾力ある未来を考える。グゼマルタン・ラボルド地図、岩田佳代子、エラリー・ジャンクリストフ訳。(日経ナショナル ジオグラフィック、3630円)

読売新聞
2025年5月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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