『ウィーブが日本を救う 日本大好きエコノミストの経済論』
- 著者
- ノア・スミス [著]/片岡宏仁 [訳]/経済学101 [訳]
- 出版社
- 日経BP
- ジャンル
- 社会科学/経済・財政・統計
- ISBN
- 9784296002092
- 発売日
- 2025/03/21
- 価格
- 2,860円(税込)
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多くの気づきと愉快な読書体験。日本経済再生をもたらす決定打とは?
[レビュアー] 田中秀臣(経済学者)
題名の「Weeb(ウィーブ)」は、日本に特別な関心と愛着を持っている人たちを指す言葉だ。日本ではあまりなじみのない言葉だろう。私も本書を読むまで特に重要な言葉だと思ってはいなかった。だが、ウィーブこそが日本経済の再生をもたらす可能性があるとすれば無視はできない。本書では、ウィーブ起業家やウィーブ・キャピタルが日本での成功体験を海外に発信することの重要性と、さらに海外からの直接投資を重要視している。前者の具体例を紹介する、サカナAIのデビッド・ハ氏へのインタビューが面白い。例えば日本での起業に必要な書類を書くには、当然に日本語の理解が必要だ。そこでハードルを下げるために、英語でも申請できるように提案するのか、と思えばふたりの意見は違う。むしろ日本で商売をするなら、日本語と日本文化を学ぶべきだ、という認識である。これがまさに日本を愛するウィーブの真髄なんだな、と思う。
本書が提案する日本経済再生の決定打となるのは、いま熊本で活況を呈しているTSMC(台湾積体電路製造)が行っているような直接投資だ。これはグリーンフィールド投資といって、その国で外国人が一から工場や会社を立ち上げるものだ。すでにある企業を買収・合併するのとは異なる直接投資である。特に日本国内で作ったものを海外で幅広く売るようなタイプのグリーンフィールド投資が、著者のおススメである。海外で勝ち抜くノウハウを日本の技術者、労働者が学べて、それは将来の日本の再生に活かせるからだ。
また日本の既存の文化資産にも注目している。特に東京にある雑居ビル街だ。さまざまな店舗が入る雑居ビルが密集することで、他の都市にはない魅力があるという。それに著者のいうように、わりと安全でもある。
多くの日本への気づきがあり、またそれはちょっと違うぞ、と突っ込む点もあり、知的な意味でとても愉快な読書体験を得ることができる。