『カラー版 本ができるまで 増補版』岩波書店編集部編

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カラー版 本ができるまで 増補版

『カラー版 本ができるまで 増補版』

著者
岩波書店編集部 [著]
出版社
岩波書店
ジャンル
産業/産業総記
ISBN
9784005009992
発売日
2025/04/22
価格
1,320円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『カラー版 本ができるまで 増補版』岩波書店編集部編

[レビュアー] 読売新聞

 紙の本を開くとき、スマートフォンやパソコンとはひと味違う心の落ち着きを感じるのは、その形自体に長い歴史が凝縮されているからだ。15世紀に聖書を印刷したグーテンベルク印刷機が登場してからは、早く、大量の印刷を可能にする様々な改良がされてきた。

 多くの図版を使い、本作りの仕組みや技術的歴史を紹介した一冊は、改めて「本は文化」だと感じさせる。

 中でもこの50年間、印刷業界は大きな技術革新が2回起きたという。1度目が手作業で活字を組む「活版」から、コンピューターを使った「電算写植」への移行。2度目は、文字や図版、写真などの紙面デザインの処理をパソコン上で一括して行い、印刷データを制作する「DTP」の登場だ。

 高度経済成長期の印刷職場で、原稿を見ながら活字を拾う若者たち。21世紀前後の職場に置かれた大きな電子機器。現在も生きる様々な職人技。数々の写真が、印刷を取り巻く時代の変化を映し出す。同時に、いつの世も変わらず良い本を届けたいと願う印刷・出版業界の人々の真心を浮かび上がらせる。(岩波ジュニア新書、1320円)(三)

読売新聞
2025年5月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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