『介護と相続、これでもめる!』
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逃げ得相続を許さぬために
[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)
兄弟のうち、誰が年老いた両親の介護をするかは、今や多くの家族にとって避けて通れない問題となった。評者も多少ながら介護を経験したが、時間と精神力を削られる度合いは想像以上であった。
一方、両親の死の後には、遺産相続という新たな問題が待っている。一生に一度あるかないかの究極の不労所得であるから、誰しもが目の色を変える。あれこれ理由をつけて介護は避けておきながら、相続の権利だけは主張する厚顔な親族が現れ、骨肉の争いとなるケースは後を絶たない。
姉小路祐『介護と相続、これでもめる! 不公平・逃げ得を防ぐには』は、著者が自らの体験と取材を踏まえ、介護と相続を巡るトラブルの回避法を説いた一冊。掲載されている事例を見ると、思わぬ親族が突然現れ、父と共に発展させてきた旅館を乗っ取られたケース、母の介護のために教諭の職も結婚も捨てたにもかかわらず、何もしなかった姉たちに遺産を奪われたケースなど、いずれも心優しい正直者が馬鹿を見てしまっている。そして残念なことに裁判所の下す判断は、懸命に介護をした者に対して冷たい場合が多いのだ。
本書は介護で苦労をした者の防衛策を紹介する目的で書かれている。しかし問題は、著者も危惧している通り、介護を避けて遺産だけちゃっかりかすめ取るためのガイドブックとしても読めてしまう点だ。図々しい者をのさばらせぬためだけに、本書をお役立ていただきたい。