「努力が続く子」と「すぐ挫折してしまう子」の決定的な差とは? 目標達成のプロが教える「続ける力」の育て方

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中高生のための目標達成ノート

『中高生のための目標達成ノート』

著者
原田隆史 [著]
出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン
ジャンル
社会科学/教育
ISBN
9784799331255
発売日
2025/02/21
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「努力が続く子」と「すぐ挫折してしまう子」の決定的な差とは? 目標達成のプロが教える「続ける力」の育て方

[文] ディスカヴァー・トゥエンティワン


画像はイメージです

同じクラス、同じ部活でも、目標に向かって着実に努力し続ける子と、すぐに挫折してしまう子がいる。なぜこのような差が生まれるのだろうか?

この問いに対する答えを持つ一人が、『中高生のための目標達成ノート』(原田隆史・著)の著者だ。原田氏は公立中学校の教師として20年間にわたり数多くの生徒と向き合い、大谷翔平選手も高校時代から実践した目標達成シートを取り入れた人材育成メソッドは、今や多くの企業でも取り入れられている。

シリーズ累計20万部を突破した『目標達成ノート』の最新作となる本書には、原田氏が教育現場で培った知見が凝縮されている。以下、部活や勉強で、目標に向かって努力ができる子に共通する特徴と、その力を育むための具体的な方法について解説してもらった。

 ***

「うちの子は、一度だめだったらすぐに『もうええわ』って言うんです」
「なぜ、うちの子はすぐにあきらめてしまうのでしょうか?」

教師をしていた頃、保護者からよくこういった話を聞きました。また生徒たちを観察していると実際に、続けられる子と続けられない子がいることもわかりました。

自分で選んだのに続かない

私が指導していた中学校の陸上競技部には毎年30名ほどの1年生が入部してきました。運動能力は平均的で、「運動が好き、でも球技は苦手」といった理由で入ってくる子がほとんど。2週間ほど様々な種目を体験した後、自分に合ったものを選びます。

自分で選んだはずの部活動・種目なのに毎年何人かは「やめたい」と申し出てきます。「練習が厳しい」「他の部活に行きたい」など理由はさまざまでした。

同じような体力や能力で、同じ環境にいて、自分で選んだ種目に取り組んでいるのに、続ける子とやめる子がいる。その違いは何か? 20年の教員生活と、その後17年の大人の人材育成の現場で見えてきたのは、「続ける力」は才能や根性ではなく、「考え方」と「関わり方」で育つということでした。

続ける力を育てるには

大人にも子どもにも「うまくいく人」と「うまくいかない人」がいます。それは器用さや賢さ、才能の差ではなく、ほとんどの場合、うまくいく人は、うまくいくまで続けたのであり、うまくいかない人は、途中であきらめてやめてしまっているのです。

つまり何をするにしても「続ける」ということが成果を出すための第一歩なのであり、続ける過程で、才能や能力が伸びて、だから成果が出る。まずはこの仕組みを理解することが重要です。

では、どうすれば「続けられる」ようになるのでしょうか。

「続ける力」を育てる3つのポイント

【1.それを『する理由』を明確にして、自分で納得する】
子どもが習い事の水泳に通ったけれど、進級試験に一回不合格になったらもう水泳を辞めたいといってきかない、困っています、というような相談をよく受けます。水泳は役に立つし体力もつくし、やっておいて損はないと思うのですが…とおっしゃる保護者の方に、私はこのように質問をします。
「お子さん自身はなぜ水泳をしたいと思っているのですか? 理由はなんですか?」
そうすると、「子どもはまだ8歳なので、理由はあまり考えられないかなと思うのですが」というような答えが返ってきます。私は言います。「子どもたちは言葉にできないだけで、それをしたい理由をちゃんと持っているものですよ」。

それを『する理由』のことを、私は「目的」と呼んでいます。目標があれば人は頑張れると思いがちですが、それだけでは不十分です。なぜその目標を達成したいのか、という「目的」が、目標に向かって頑張る原動力となります。(これは大人も同じです)

目標(合格やテストの点数)だけでは、子どもの続ける力は育ちません。合格したい理由や、水泳をすることで得られるもの、進級すると誰が喜んでくれるのか。そういったことを丁寧に質問して、子どもから引き出してあげるのです。それをする理由=目的が明確になり、かつ、自分でちゃんと考えて納得できる目的が見つかれば、今度は「どうしても続けたい」に変わります。試験に一回落ちたとしても、頑張りたい理由があるので続けたいと思えるようになるのです。

【2.「失敗」の持つ意味を変える】
失敗すると「最悪だ」と感じるのは、人の自然な反応(自動思考・自動感情)です。自動思考とは、ある出来事に対して瞬間的に、自動的に浮かぶイメージや考えのことで、その考えによって引き起こされる気持ちや感情が、自動感情です。

自動思考―自動感情のラインが強化されると、「失敗=悪いこと」になってしまい、その結果落ち込んだり悲しくなったりして、一度の失敗で諦めやすくなります。
しかし落ち着いて考えてみれば、失敗しない人などいないので、失敗は「当たり前のこと」、それよりも失敗して辞めたり諦めたりして続けないから、成果が出ないのです。

失敗は悪いものという自動思考を変えるために、子どもが失敗したら、「なんで失敗したの?」ではなく「ナイストライだったね!」と声をかける。進級試験に合格できなかったら「〇〇の部分はとても良かったとお父さんは思うよ」と伝える。うまくいかなかったことを乱暴に「失敗」とまとめてしまうのではなく、「チャレンジ」ととらえる。次に、うまくいったことと、うまくいかなかったことを仕分けして整理する。そうすると、次にうまくいくためには何を改善すればいいのかを考えることができますし、できたこともあったのだと気づくこともできます。

子どもが何かを「失敗」したときには、ぜひ、「とても良いチャレンジだったね。もし、もう一度やり直せるとしたら、どうしたい?」と聞いてあげてください。これは、次のチャレンジへの改善アイデアを生み出すための「魔法の質問」です。

【3.小さな「できた」を丁寧に拾う】
人は何かをするときには、それに取り組む前に「これはうまくいきそうだ」とか「難しそうだ」など、ある程度の「あたり」をつけているものです。簡単にいうと「どれくらい自信があるか」です。「これくらいならできそうだ」という自信のラインを、人はそれぞれに持っていて「自己効力感」といいます。

実は、自信は2つの要素でできています。

(1)自己効力感
これならできる、ここまでならやれる、という仕事や勉強や部活動に対して感じる自信のことです。

(2)自己肯定感
私は今のままでいい、生きていてOK、ここにいるだけで素晴らしい、と自分に対して感じる自信のことです。人間一人ひとりの命を守るために欠かせないとても大切な自信です。

この2つの自信は自分で高めることができます

その方法は「書く」ことです。私はこれを「自信の貯金」と呼んでいます。

【自己効力感の貯金方法】
活動において、自分ができたこと、うまくいったこと、できるようになったことを書きます。

【自己肯定感の貯金方法】
人に対して「ありがとう」と言えたこと、人から「ありがとう」と言ってもらったことを書きます。

私たちは、何か大きなことを成し遂げ、大きな山を乗り越えたときだけ自信が育つと思っていますが実はそうではありません。「私はそれができる」という自信=自己効力感は日々、少しずつ、しかも自分で育てることができるのです。

自己肯定感を育てるには、保護者の関わりもとても大切です。「~ができるから素晴らしい」ではなく、「生まれてきてくれてありがとう」という無償の愛情を、常にお子さんに伝えてあげてください。

継続できる子を育てるために、家庭でできること

◎目的と目標を言葉にさせる
子どもに「どうなりたい?」「なぜ頑張りたいの?」と聞いてください。自分の言葉で目的・目標を語る経験は、驚くほど大きな変化を生みます。

◎記録する習慣をつける
日々の取り組みや感情を文字で記します。小さな成長を日々実感することは、自信とモチベーションを育てます。

◎大人が関わる時間をつくる
「一緒にノートを見よう」「今日のがんばり、聞かせて」など、積極的に関わってください。
子どもと一緒に、夢や目標、チャレンジを共有する時間を楽しんでください。子どもの続ける力を支える「安心の土台」=自己肯定感を育てることにもなります。

「続ける力」は才能ではなく、考え方と関わり方で育つものです。
まずは、子どもたちの思いや願いを語らいによって引き出す。そこから始めてみてください。

原田隆史(はらだ・たかし)
株式会社原田教育研究所 代表取締役社長。ビジネス・ブレークスルー大学グローバル経営学科教授。一般社団法人JAPANセルフマネジメント協会代表理事。埼玉県教育委員、三重県政策アドバイザー、奈良市生徒指導スーパーバイザー、高知市教育アドバイザーを歴任。大阪市生まれ。奈良教育大学卒業後、大阪市内の公立中学校で20年間勤務。保健体育指導、生活指導に注力。課題を抱える教育現場を次々と立て直し、「生活指導の神様」と呼ばれる。独自の育成手法「原田メソッド」により、勤務3校目で指導した陸上競技部では7年間で13回の日本一を誕生させる。大阪市教職員退職後、大学講師を経て起業。「原田メソッド」に多くの企業経営者が注目し、野村證券、キリンビール、三菱UFJ信託銀行、神戸マツダ、住友生命保険、ユニクロ、アステラス製薬、カネボウ化粧品、武田薬品工業などの人材育成研修を担当。これまでに約600社、15万人以上のビジネスパーソンを指導した実績をもつ。
オリンピック選手などアスリートのメンタルトレーニングにも携わる。現在も、企業・学校・家庭の人材育成教育、講演・研修活動、不登校児童生徒支援活動、テレビなどメディア出演、執筆活動と幅広い分野で活躍中。著書はこれまでに30冊、国内にとどまらず世界の25を超える国・地域で出版されている。代表作に『一流の達成力』(フォレスト出版)、『カリスマ体育教師の常勝教育』『最高の教師がマンガで教える勝利のメンタル』(ともに日経BP社)、『成功の教科書』(小学館)。

ディスカヴァー・トゥエンティワン
2025年6月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

ディスカヴァー・トゥエンティワン

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