【聞きたい。】伊坂幸太郎さん 『パズルと天気』 「僕の履歴書みたい」な短編集

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パズルと天気

『パズルと天気』

著者
伊坂 幸太郎 [著]
出版社
PHP研究所
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784569859286
発売日
2025/05/30
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【聞きたい。】伊坂幸太郎さん 『パズルと天気』 「僕の履歴書みたい」な短編集

[文] 産経新聞社

名ストーリーテラーがデビュー25周年に届ける短編集。

「僕、5月25日生まれなので、5の倍数が異常に好きなんです。デビュー作が第5回新潮ミステリー倶楽部賞。吉川英治文学新人賞が第25回、本屋大賞も第5回…。25周年にも気持ちはのってます」

他の作家とのアンソロジーなどに収載されていた4編と書き下ろしの計5編は、「僕の履歴書みたい」なラインアップという。

「透明ポーラーベア」は平成17年の発表作。会社員の優樹が恋人と訪れた動物園で姉の元カレと偶然再会し、姉と歴代彼氏らに思いをはせる。

24年の「Weather」では、女性にモテる友人の結婚式に出席した大友が、元カノだった新婦からある相談を受けていて…。じんわりくるいい話だ。

「イヌゲンソーゴ」(26年)「竹やぶバーニング」(31年)はおとぎ話がモチーフのユーモラスなSF。

持ち味の伏線回収と謎解き、執筆の経緯などを紹介する巻末の解説も含め〝らしさ〟があふれる。作品を読み返した自身の感想は「昔も今もあまり自分の書くものは変わらないのだな」。

「正直あまり古びてない。時代によりかからず、自分が読んで面白いものを書いていて、その好みが変わっていないからじゃないかな」とも。

書き下ろしの「パズル」では、マッチングアプリで知り合った女性との交際で悩む秀磨が、やはりマッチングアプリで出会った女性名探偵に相談。彼女は見事に問題を解き明かすが…。

「そもそも短編は苦手な上にアイデアもなくなってきている」と産みの苦しみもあり、どんでん返しの展開も書きながら思いついたという。だが、そこは名手。「時期、経緯はバラバラでも一冊になると意外と統一感があって、僕の作家性みたいなものも出ている」と手応えは十分だ。

今後は「50代で代表作を一つ出したい」と意気込む。そして、少し照れながらこうも話した。「読者が僕の作品を楽しんで、あしたも学校、会社に行くか、と思ってもらえたらいいですね」

(三保谷浩輝、写真も)

   ◇ 

いさか・こうたろう 昭和46年、千葉県生まれ。平成12年、『オーデュポンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、デビュー。『死神の精度』『ゴールデンスランバー』『逆ソクラテス』など著書、受賞歴多数。

産経新聞
2025年6月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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