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「この作品が、なぜSF的な感動を呼びおこすのか?」SF界の大ボス、伊藤典夫
[レビュアー] 大森望(翻訳家・評論家)
SFを読むのに必要なことはすべて伊藤典夫に学んだ。英米の優れたSFをいち早く日本に紹介した翻訳家というだけでなく、SFファンの大ボスであり、SF研究の第一人者であり、まさにSFの中心だった。
にもかかわらず1冊も単著がなかったが、その空白を埋め合わせるように、60年分の原稿を1冊にまとめた2段組1400ページの大著『伊藤典夫評論集成』がついに出た。この歴史的な本の刊行を記念して、今回は著者の訳業から、代表的な文庫3冊を紹介する。
ブライアン・W・オールディス 『地球の長い午後』は、椎名誠『アド・バード』や貴志祐介『新世界より』など多くの国内小説に影響を与えた英国の遠未来SF。弱冠20歳の伊藤典夫は〈宇宙塵〉1963年6月号で前半の粗筋を詳細に紹介したあと、「奇怪な植物が続々と登場し、グレンの放浪は樹木限界(テインバーライン)を越えて夜の国まで続く。悪夢のような世界は、ますます陰惨になり、おしまいになるころにはうんざりしてくる。それでも読まずにはいられない。/奇妙な魅力を持った本である」と分析する。
カート・ヴォネガット・ジュニア『スローターハウス5』は、異星人に誘拐され、時間の流れから解き放たれた男の視点から、戦時中の体験とその後の生活を描く。伊藤典夫いわく、
「この作品が、なぜSF的な感動を呼びおこすのか?それは、ドレスデン爆撃という個人的な体験が、異星人やタイム・スリップのようなファンタスティックな要素を触媒にして普遍化、抽象化され、人類と文明の本質にかかわりあう問題として迫ってくるからだ。これを、たんなる寓話ではなくSFと呼ぶことができるのは、これまでの優れた文明批評SFと共通する作者の巨視的な世界観が、その小説世界の背景に感じられるからなのである」(〈SFマガジン〉71年6月号)
『伊藤典夫翻訳SF傑作選 最初の接触』 は、高橋良平編の短編SFアンソロジー。伊藤典夫訳でSFマガジンに掲載された膨大な短編群から、宇宙を舞台にした名作7編を選りすぐる(いずれもハヤカワ文庫SF)。























