『いつも好印象な人がしている言葉の選び方』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
【毎日書評】なぜか相手が自然と動いてくれる。「好印象」な人のことばの使い方
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『いつも好印象な人がしている言葉の選び方』(松はるな 著、あさ出版)の著者が述べているとおり、私たちは日常的に多くのことばを発し、多くのことばを吸収しながら過ごしています。
問題は、同じことを伝えるにしても、選ぶことば次第で相手や周囲に与える印象が大きく変わってしまうこと。そのため「よいことば」を使おうと心がけるわけですが、当然ながらそれだけですべてがうまくいくわけではありません。
感情や想いをストレートに伝えるだけではなく、相手の心に合わせた言葉を選ぶことが、とても大切です。
どんな言葉を選び、どう伝えるか?
これを意識するだけで、仕事も人間関係も、そして人生そのものも、格段に良い方向に変わっていきます。(「はじめに」より)
「言語化コンサルタント」として活動する著者でさえ、失敗を重ねてきたそう。だからこそ、ことばの怖さが身にしみているというのです。
度重なる失敗から、言葉の伝え方の重要さを痛いほど実感した私は、「どんな言葉を選び、どう伝えるか?」をとても大切にするようになったのです。
言葉選びを意識し始めたら、次第に仕事も人間関係も、驚くほど順調に進むようになりました。
選ぶ言葉ひとつが、その1秒後の展開を大きく変え、ひいては未来を変えるということを、身をもって実感したのです。(「はじめに」より)
そこで本書では、相手から好印象を持ってもらえるようなことばを選ぶための秘訣を、わかりやすく解説しているわけです。きょうは第5章「仕事がスムーズに進む言葉」のなかから、いくつかのポイントを抜き出してみることにしましょう。
仕事が遅いと感じたときは?
× 早く始めましょう
〇 AとB、どちらから先にやりますか?
(130ページより)
会議でなかなか本題に入らないときなどには、つい「早く始めましょう」と促したくなってしまうかもしれません。また、相手の仕事が遅いなと感じたときには、「スピードアップしましょうか」と催促しそうになることもあるでしょう。
とはいえストレートに伝えてしまうと、“間接的に責めているような印象”にもなりかねません。その結果、相手の仕事に対する士気が下がったり、落ち込んでしまうなどマイナスな影響を与えてしまうこともあるわけです。
では、どうすればいいのでしょうか?
著者によれば、「早くしてほしい」と催促せず、相手が自発的に動きたくなるようにするためには、“相手に選択肢を与えて行動を促すことば”で伝えることが大切。
タスクが2つ以上ある場合、「Aさんへの連絡と、ミーティング用の資料作成、どちらから先にやりますか?」と伝えると、「そうだ、まずはAさんに連絡を済ませてしまおう!」と相手にタスクのリマインドをすることもできます。
なおかつ「早く」と言われるとどうしてもやらされている感が出てしまいますが、どちらかを選べるよう選択肢を提示すれば、相手に「自分で選んだ行動」として無意識に責任感を持ってもらうこともできます。(131ページより)
やらされている感があると、前向きな気持ちになれなくなるのは無理のない話。しかし複数の選択肢のなかから自ら選んだものであれば、能動的になれるわけです。(130ページより)
仕事をお願いされたとき
× ちゃんとやっておきます
〇 〇〇を〇時までにやっておきます
(136ページより)
なにか仕事を頼んだときに相手から「ちゃんとやっておきます」という答えが返ってきたら、いわれたほうは「大丈夫かな」と少なからず不安になってしまうもの。漠然としすぎているからで、逆にいえば“状況に応じて的確に言語化できる人”こそが“仕事を安心して任せられる人”だといえるのです。
「会議の準備進めておいてくださいね」とお願いしたときに「ちゃんとやっておきます」だけのAさん。「資料の準備と先方へのリマインドを明日10時までにしておきます」と進めるべき内容を明確に言葉で伝えてくれるBさん。
あなたが仕事をお願いするとしたら、どちらの人にしますか? きっとBさんを選びますよね。(136ページより)
つまり仕事の場面では、「相手が想像しやすいように」内容・日時などを明確に伝えるべきだということです。(136ページより)
時間がなくてできない場合は?
× 手一杯でできません
〇 〇時間後でよろしければ、ぜひよろしくお願いします
(140ページより)
仕事を頼まれたとき、たとえ時間がなくて無理だと感じたとしても、「手一杯でできません」と伝えるのは得策ではありません。相手のなかに、「断られた」という印象が強く残ってしまうからです。
もし今は手が離せないとしても「今は手一杯なのですが、2時間後でよろしければ、ぜひお願いします」と空きができる時間帯を伝えておくようにすると、「助けてくれようとしている前向きな姿勢」が伝わります。
また、お願いされている内容のボリュームに無理がある場合は「この範囲でしたらお手伝いできますが、いかがでしょうか?」と、無理せずできる内容を提案するのも良いでしょう。
また、時間的余裕がない場合は、「できる時期の提案」を伝えるのもオススメです。(136〜137ページより)
シンプルに「できない」「無理」「手一杯」と伝えたのでは、冷たい印象を与えてしまう可能性があります。だからこそ、無理のない範囲で提案し、前向きでポジティブな印象を与えることが大切なのです。(140ページより)
相手の立場に立ったことば選びができるようになると、コミュニケーションのあり方が大きく改善されるはず。本書を活用し、ことばの持つ力を再認識してみてはいかがでしょうか。
Source: あさ出版


























