『これまでと同じ採用手法で大丈夫なのか?と悩んだときに読む 採用の新基準』
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【毎日書評】採用のミスマッチは「会社のせい」かもしれない。求職者が本当に見ているポイント
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『これまでと同じ採用手法で大丈夫なのか?と悩んだときに読む 採用の新基準』(秋山 真 著、アスコム)の著者は、これまで100社以上の企業に対し、採用の現場を支援してきたという人物。
そうしたなかで、「スタイルマッチ」という考え方の重要性を実感したのだそうです。すなわちそれは、「企業と働く人の価値観のマッチング」。
スタイルマッチとは――
「どんな価値観を持ち、それに基づき、どんな判断をし、どんな行動をとるか」という、“働き方のスタイル”の相性を見極めるということです。
スペックでは測れない、その人の“動き方のクセ”や“意思決定の根っこ”に注目する、これまでにない採用の視点といえるでしょう。
(「はじめに」より)
見落とすべきでないのは、スタイルマッチを実現するためには、求職者のスタイルを見極めるだけでは不十分だということ。企業側もまた、自分たちの“スタイル”を明確に言語化し、オープンに発信していく必要があるのです。
「この会社はどんな考え方を大事にし、どんな判断や行動をよしとしているのか」ということの輪郭が伝わって初めて、求職者はそれを自らのスタイルと照らし合わせることができる。そしてそこから、「ここなら自分らしく働けそうだ」と判断できるわけです。
こうした“スタイル”を起点にしたマッチングが生まれると、採用は単なる「選抜」ではなく、価値観ベースの「選び合い」へと進化していきます。(「はじめに」より)
すなわち、納得感のあるコミュニケーションを通じ、求職者にとっても企業側にとっても最良の選択ができるようになるということです。
こうした考え方を踏まえたうえで第2章「スタイルマッチで採用課題を改善する」に目を向け、この考え方をもう少し深掘りしてみましょう。
“なんとなく合いそう”の落とし穴
スタイルマッチは著者による造語なので、ピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。そこで、ここではひとつの例が示されています。
たとえば新たなプロジェクトにアサインされたときなどに、打ち合わせでも会話のテンポが合ったり、仕事へのモチベーションも似ていたり、「このメンバーとはなんとなく合いそうだ」と感じることもあるのではないでしょうか。
ところが、いざ本格的なプロジェクト進行に入ると、“目指すゴールは一致しているのに、「そこにたどり着くスタイル」が違う”ということになったりもするもの。そうなってしまうと、摩擦やストレスが、少しずつ積み重なっていくわけです。
そして、採用にも同じことが起きているようです。
ナビサイトや説明会の表層的な情報だけを確認し、「この会社、なんとなく雰囲気がよさそう」と感じて入社しても、「『スピード感を大切にする』といいながら、じつは逐一の報連相を求める文化だった」「『自由な社風』と聞いていたのに、意思決定には厳格な承認フローが存在した」など、表層だけでは見抜けない“スタイルのズレ”が入社後の違和感につながっていくということ。
この原因は、価値観の“芯”は近くても、行動や判断のズレが見えづらいことにあります。だからこそ、スタイルマッチ=「価値観の体現」レベルでの一致が大切なのです。(80ページより)
「なにをしているか」だけでなく、「大切にしていることを、どんな行動で、どんな判断で実現しているか」まで、しっかり見るようにしなければ、本質的なマッチングは起きないわけです。(78ページより)
採用情報は「点」ではなく「線」でつなげ、「立体」で見えるようにする
そもそも価値観は、表層が似ていたとしても人によって意味づけや解釈が大きく異なることがあるものです。したがって企業側も、「当社は“挑戦”を大切にしている」というような表現を用いるだけでなく、「その“挑戦”とは、どういう意思決定をし、どんな行動をとることなのか」までを言語化する必要があるのです。
そうしなければ、マッチングのズレを避けることはできないからです。
そのためには、採用にマーケティングの要素を取り入れていかないと、満足のいく結果を得られないでしょう。単なる制度説明や事業紹介ではなく、企業のスタイルを立体的に見せるための情報設計が、今は求められています。(82〜83ページより)
たしかに昔の採用情報は、「点」でOKだったかもしれません。ところがいまは、「せん」でつながり、「立体」として見えることがスタンダードになったということです。
ただしそれは、単に情報量を増やせばいいということではないようです。
かつては、募集要項にある仕事内容や勤務地、給与といった“点の情報”だけで十分に機能していました。しかし近年は、企業がどんな価値観を持ち、それをどう体現しているのか、その“背景”や“行動様式”にまで関心が向けられるようになっています。
しかも、それらをナビサイトの一括掲載や年に数回のイベントだけで伝えるのでは不十分です。チャネルやタイミングを限定せず、継続的に発信し続けていくことが、スタイルマッチの前提になる時代なのです。(83ページより)
いわばカルチャーマッチから「スタイルマッチ」の時代へと、確実に移り変わっているということ。そのためこれからの企業は、多様性の時代にしっかりと順応しながら、求職者のニーズに応えられるだけの受け皿を整えることが大切なのです。
いいかえれば、それができた企業が生き残り、成功していくことが予想されるということです。当然ながらその逆も考えられるわけですから、とても重要なことであるといえそうです。(81ページより)
「スタイルマッチ」の考え方を軸として、いまの採用の問題点や改善点を明らかにした本書は、“これからの採用”の大きなヒントになってくれるはず。よりよい採用を実現するために、ぜひとも参考にしたいところです。
Source: アスコム


























