なぜAIの答えは「なんか違う」のか? 期待外れを防ぐ5つの質問のコツ

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

AIを使って考えるための全技術

『AIを使って考えるための全技術』

著者
石井 力重 [著]/加藤 昌治 [監修]
出版社
ダイヤモンド社
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784478119488
発売日
2025/06/12
価格
2,970円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】なぜAIの答えは「なんか違う」のか? 期待外れを防ぐ5つの質問のコツ

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

アイデア発想ツールの企画や開発を手がける『AIを使って考えるための全技術 「最高の発想」を一瞬で生み出す56の技法』(石井力重 著、ダイヤモンド社)の著者は、「すべての職業や業種において、また公私を問わずして、私たちには創造性が必要である」と断言しています。

「創造性」と聞いただけで「クリエイティブ職や企画職ではない自分には縁遠いもの」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、決してそうではないということ。

たとえばちょっとした資料作成、窓口や店舗でのお客さまとのやりとり、あるいは毎日の料理など、人間の行動にはなんらかの創造性が含まれているわけです。

たしかにそのとおりですし、「創造性とは要するに、『自分の頭で考える』ということ」だという主張にも共感できるでしょう。しかしそれ以上に注目すべきは、著者が「創造的な活動にこそ、AIの真価は発揮される」とも述べている点です。

これまで3万人を超える方々と、アイデア発想に関するワークショップや研修を行い、AIの登場とともに各種のAIを使い、創造性や創造工学にAIがもたらす可能性を研究してきた私の結論です。「AIを使って考える」ことが、人々の創造性のアップデートを可能にし、昨日までとは違う今日をもたらす。その手応えを感じています。(「はじめに」より)

つまり本書は、著者が研究・実践してきた“アイデアを生み出すための手法”を、AIで楽に、そして確実に実践するための手引書となっているのです。AIを使って創造的に考えるための56の技法が紹介されており、さらには「AIを使って考える」方法もふんだんに盛り込まれています。

700ページ近いボリューム感に圧倒されてしまうかもしれませんが、どの技法も実践のハードルは高くないようです。

きょうは「AIを使って優れたアイデアを導き出す具体的な流れ」を解説した序章「『AIを使って考える』とは? チュートリアル」のなかから、「AIと対話するときの『5つの注意点』」を確認してみましょう。AIはコンピュータのプログラムであり、よくも悪くも入力された質問文に対して忠実。そのため「質問のコツ」を知っておくことが大きな意味を持つのです。

1:はっきりと具体的に聞く

おしゃべり口調の文章入力でもちゃんと答えてくれるところがAIの魅力。ただし、人間同士の会話であればニュアンスや文脈を踏まえて理解できる内容が、AIには伝わらない場合もあります。

たとえば「いろいろな方法を教えてください」と指示したとき、人間同士の会話であれば「いろいろって、このあたりかな」と察することができるはず。ところがAIは「いろいろ」という文言に対し、「最高」や「極端」ではなく「中間値」を想定して回答を出してくる場合があるのです。

そのため、出てきた回答に対して違和感を覚えるしかないわけです。

改善策は、「いろいろ」にもう少し情報をプラスすること。「5つから7つ」「高い価格のなかで」「なかでも極端な方法を知りたいです」など、1つ2つの情報を付け加えておくと、質問者の意図やイメージをAIが正確に受け取ってくれます。(35ページより)

つまり人間側が、AIへの指示方法や質問の作法を身につけておくことが大切なのです。(34ページより)

2:全体像を伝えつつ、聞く

短すぎる質問だと、背景がわからないためAIも戸惑ってしまいます。そうならないようにするためには、まず全体像あるいは前提を情報として入力することが大切。その背景を踏まえたうえで、できるだけ具体的な補足情報を追加してあげるのです。

多少長くなってしまったとしても、複雑になっても、聞き手の脳裏に浮かんでいる情報は出し惜しみすることなく記述するのがよいようです。面倒ではありますが、結果的にタイムパフォーマンスは格段によくなるからです。(35ページより)

3:いっぺんに聞かずに、1つずつ聞く

AIは優秀なので、上手に2つの質問をさばいてくれるときもあります。ただ多くの場合、2つの依頼を押し込んでも1つだけしか回答が返ってこない、あるいは2つの質問を混同して意味不明な返事をしてきます。(36ページより)

そのため基本的には1つずつ、一問一答を繰り返したほうが、求める回答を得られるわけです。(36ページより)

4:AIのハルシネーションに注意する

ときにAIは高いレベルの具体性を持って回答します。ですが残念なことに、その回答が虚偽やデマカセを含んでいるケースがあります。この現象を「ハルシネーション」と呼びます。直訳すると「幻覚」です。とくに固有名詞は要注意。文章形式になっていると、なんとなく裏が取れているように感じてしまいます。(36ページより)

もちろん、AIからの回答を発想のヒントとして使うのであれば問題はないでしょう。しかし、市場調査レポートのような正確性が求められる書類にそのまま使用するのは、事故を防ぐためにも避けるべきなのです。(36ページより)

5:自社の「守秘義務ルール」を遵守する

基本的に、AIに入力した情報はプラットフォーム側に蓄積されると考えてください。企業や組織において、研究開発や商品企画、新規事業開発にかぎらず、守秘義務のある情報はたくさんあります。そうした社外秘の情報をAIに入力していいかどうかは企業によって対応が異なりますから、使用する際は社内規定を確認し、遵守する必要があります。(37ページより)

一方、オープンになっている情報だけに準拠してAIに問いかけることは問題ないでしょう。とはいえ参照できるのは、基本的にはオープンソースになっている情報のみ。そのため、あくまでオープンな情報をベースにした推測になるということです。それでも、少なからず役に立つはずではありますが。(37ページより)

著者が本書を通じて提案したいのは「AIに考えてもらう」ことではなく、「AIを使って考える」こと。AIの力を利用しながら、自分自身が最高のアイデアを生み出せばいいという考え方です。つまり、どう活かすかは自分次第。うまく活用すれば、これまで以上の到達点にたどり着けるわけです。

Source: ダイヤモンド社

メディアジーン lifehacker
2025年7月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク