『駄菓子屋の儲けは0円なのになぜ潰れないのか?』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
【毎日書評】商店街の靴屋や古本屋が、大手に負けることなく生き続ける「本質的」な理由とは?
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
街中を歩いていると、「なぜ生き残っているのだろう?」と不思議に思う店を見つけることがあります。また、住宅街などで遭遇する焼き芋屋や不用品回収業者の軽トラックにも同じような思いを抱くかもしれません。
そうしたビジネスが、激しい競争や経済変動のなかで、どのようにして生き延びているのか――。経営コンサルタントである著者も、多くの人からこういった質問をされたそう。つまり『駄菓子屋の儲けは0円なのになぜ潰れないのか?』(坂口孝則 著、SB新書)では、そのカラクリを明らかにしているのです。
とはいえ、答えは意外と簡単でもあるようです。それは思い込みにすぎず、実際には大量の店が日本中で潰れているというのです。
なぜならば、商売とは単純なもので、コスト以上の売上がなかったら潰れてしまうからです。オーナーの道楽で運営していて、どんなに費用がかかってもいい店もあるでしょう。ただしそれは例外的なケースです。
ですから、正確には「なぜお客が入っていない店が潰れないのか」ではなく、「なぜお客が入っていないように見えるあの店が潰れないのか」に問いを変える必要があります。(「はじめに」より)
市場経済がどうとか日本経済がどうとかいうような難しい話ではなく、ミクロな観点から“個々の店が生き残っている秘訣”を知る必要があるわけです。
たしかに、どれだけ不景気だといっても、すべての店が閉店するわけではありません。右肩下がりの業界でも、全員が食えていないとは限らないでしょう。つまりマクロな環境はひどかったとしても、個人が生き残るくらいは工夫次第でいくらでも可能だということ。それは、個別の事例を見ていくと明らかになるそうです。
そこで本書では、“「しぶとく生き残る」ビジネスの事例”を紹介しているのです。第2章「あの商店街の笠屋はなぜ30年以上続くのか?」のなかから、2つのビジネスモデルをピックアップしてみましょう。
チェーン店に負けないサポート――靴屋のビジネスモデル
いまの時代、地方都市で靴を買おうと思ったら、ショッピングセンター内のチェーン店くらいしか選択肢はないかもしれません。昔は商店街などでも個人経営の靴屋が営業していましたが、大手資本でない限り経営が難しくなったという側面があるからです。
そもそもトレンドがすぐに変わりますし、多様な種類の、しかもサイズ違いまでをまず多くストックしておかなければならない。それは、なかなか難しいことです。
そんな時代に生き残っている靴屋は、販売よりもまず「修理」に力を入れている靴屋です。たとえば、他店で修理ができないと断られた革靴だったり、子どもの頃に履いていた靴を孫のためにリメイクしたりする作業は、大手の靴屋では個別の対応が難しく、小規模な店舗ほど得意といえます。修理に際してじっくりと話を聞くことで、お客との強固な関係も築けるでしょう。(43〜44ページより)
また著者はそれ以外のニッチな観点から、警備員の靴を修理することを得意としている靴屋の存在にも注目しているといいます。なるほどそうした業態であれば、企業から一定量の仕事を継続的に受注できるため安定的でしょう。
なお、私は普段カスタムオーダーの靴屋を愛用しているのですが、私の足型について詳細な情報を残してくれています。さらには靴磨きの指導やクリームやブラシの選び方まで指南してくれます。(44ページより)
つまり、ただ靴を販売するだけではなく、靴を通して知恵を販売してくれているということ。単なる販売だけでは大手のチェーン店に勝てないからでしょうが、こうしたアプローチが非常に大きな意味を持つことは間違いなさそうです。(43ページより)
愛好家に選ばれる店づくり――タバコ屋、古本屋のビジネスモデル
基本的に、タバコ市場が右肩下がりになっていることは否定できません。しかしそんななかにあってもタバコ屋は、定期的に買ってくれるお客、あるいは一度に大量のタバコを買ってくれるお客に支えられているといえます。
タバコ市場の縮小は個人店で対処できるものではありませんし、タバコ自体は割引販売もできないため、価格で他店と差別化することも不可能。そのため、“いかにお客個人とつながるか”しか手段は残っていないわけです。
そんな中、生き残りを図るタバコ屋が行っている創意工夫を紹介します。まず有効なのは、品揃えの多様化です。みなさんも、街中のタバコ屋で、やたらとたくさんの種類を揃えている店を見かけませんか。見たことがない外国産タバコまで揃えていますよね。日本の代表的なものだけではなく、ニッチな層に向けて、広い品揃えを誇っています。(45〜46ページより)
事実、著者自身も喫煙者だったころには、とにかく品揃えが多い店舗に行っていたそうです(私も同じだったので、気持ちはわかります)。そういった店の特徴は、従来の紙巻きタバコに加え、近年人気が高まっている加熱式タバコ製品をも積極的に取り扱っている点。そうやって、さまざまなお客のニーズに応えているのです。
上述のとおりタバコは値引き競争がなく粗利益を稼げないため、お客からリピートしてもらうことがとても重要なのです。
また、タバコ屋と似た業態に古本屋があります。本が売れない時代だといわれるようになってからずいぶん経ちますが、それでも本好きは存在し、電子化されていない書籍もたくさんあります。純粋に紙の書籍が好きだという層もいることですし、ニーズはあるのです。
見逃すべきでないポイントは、そもそも古本は嗜好品であるということ。しかし、だとすれば古本屋になんらかのブランド力や魅力が求められます。
たとえば、理数系に特化した古本屋があります。理数系の専門書だけではなく、理数系に関係する絵本や小説まで並んでいます。さらに生物や土壌に詳しくなれるよう、顕微鏡まで覗ける徹底ぶりです。こうなると、古本屋という一つのコミュニティといえるでしょう。(48ページより)
もちろん理数系に限った話ではなく、ジャンルごとに「あの店に行けばきっと見つかる」という期待感を持ってもらうことが必要なのです。
いいかえれば、「この店でしか味わえない魅力」を感じられるような“工夫の継続”が求められるということ。それこそが大手チェーン店とは一線を画す個性となり、お客との長期的な信頼関係を築く鍵となるからです。(45ページより)
著者は本書のなかで、ビジネスモデルのさまざまな成功パターンを分析してきた実績に基づき、“ビジネスの成功要因のなかでもとくに重要で、普遍性の高いもの”を取り上げているのだと述べています。「儲け」にまつわる疑問を解消し、それを自身のビジネスに活かすために、参考にしてみる価値はありそうです。
Source: SB新書


























