『自分の言葉で書く 思いが届く・相手が動く「文章」の書き方』
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【毎日書評】自分のことばで伝えたいのに「思いを言語化できない」ときの解決策
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『自分の言葉で書く 思いが届く・相手が動く「文章」の書き方』(さわらぎ寛子 著、明日香出版社)の著者は、コピーライターとしての経験を軸として、「言葉で仕事をつくるスクール」を主宰する人物。
そうした活動の渦中において、“書けないと悩んでいる人”には共通するものがあると感じているのだそうです。
それは、「どう思われるか」「おかしく見えないか」など“矢印”が自分に向いていること。しかし、矢印の向きを自分ではなく相手に向けることができたとき、文章も伝え方も仕事も変わってくるはずだというのです。
私は、こう考えています。
「自分が言いたいことを、相手が知りたいこと・相手に伝わることに変換する」
「自分が面白いと思うことと、相手が興味を持つことの交差点を探す」
これが、自分の言葉で書くということだと思っています。
「評価されたい」「よく見られたい」という気持ちは、矢印が自分に向いている状態。
「あの人に届けたい」という想いは、矢印が相手に向いている状態。
その違いが、言葉の届き方を大きく変えるのです。
(「はじめに」より)
そして大切なのは、自分にしか書けないことを持ちながら、それを相手に届くかたちで表現するという“両方の視点”を持つこと。
自己満足的な文章ではなく、届く文章を。
自分を飾る文章ではなく、誰かの背中を押す文章を。
(「はじめに」より)
こうした考え方に基づき、本書において著者は「自分と読者」の視点を行き来しつつ、“自分自身のことば”で書くための技術とヒントを明らかにしているのです。第1部「書く前の準備」内の第1章「『うまく書けない』の壁を越える」のなかから、2つのポイントを抜き出してみましょう。
なにを書けばいいのかわからない
著者によれば、「どう書くか」以前に「なにを書くか」で迷う方は少なくないのだそうです。では、どうすればいいのか? まず大切なのは、「誰に」「どんな気持ちになって」「どんな行動をしてほしいか」を考えること。
相手がいない場合はなにを書いてもよく、自由な状態です。一方、相手がいる場合は、“相手がどんな人で、どんな状況にあるか”を考える必要があります。相手のことをある程度理解したうえで、「文章を読んだ人に、どんな気持ちになってどんな行動をしてほしいか」を決める。そうすれば、「なにを書けばいいか」が見えてくるわけです。
例:イラストを描いている人が、ブログで自分の活動について書く場合
誰に:可愛いものが好きな人、仕事や学校に疲れている人、癒やされたい人
どんな気持ちになって:このイラストを見ると癒やされるな、応援したいな
どんな行動をしてほしいか:この人のブログいいよとシェア、口コミ
(54ページより)
このように、まずは「誰に向かって書くか」を決めることが大切だということ。なお年齢や性別で区切る必要はなく、実在する人を3人思い浮かべ、その人たちの状況を書き出してみるのがおすすめだそうです。(53ページより)
思いや考えをことばにできない
思いや考えをうまくことばにできず、書けないというケースもあるでしょう。それは、どこかに「自分の思いを表すことば」がないか探し続けている状態であるようです。とはいえ、そもそも「自分の思いにぴったりのことば」はどこかに転がっているようなものではありません。
したがって、見つかる可能性の低いものを探し続けるのではなく、うまく表現できなくてもいいので、いったん書いてみるべき。まずは書いてみて、そのあと見なおし、違和感のある箇所を見つけたら“よりふさわしいことば”に置き換えていけばいいということです。
なお、ここで著者は“うまくことばにできないとき”におすすめの方法を3つ紹介しています。
1.「うまくことばにできないんですけど」と断ってから話してみる
話すまでは不安かもしれませんが、話しているうちにだんだんと、いいたいことを言語化できるようになるもの(ひとりごとでもOKだそう)。自分が口にしたことをメモしたり、録音したりすることも効果的であるようです。
2.頭に思い浮かんだことばを書き出して、類語辞典を引いてみる
類語辞典は、特定のことばの“別の表現”の宝庫。たとえば「ダメ出しをされてへこんだ」ことを伝えたいときに「へこむ」を引いてみれば、「引っ込む」「窪む」「穴が開く」など、さまざまなことばを見つけることができるはず。また、類語辞典を引く習慣をつけると、表現のバリエーションも増えていくことになるでしょう。
3.「なにがいちばん」と「なぜ」を考える
お客様からダメ出しされたとき、「お客様からダメ出しをされてへこんだ」とだけ書いたのでは幼稚な印象になってしまいます。大切なのはもう一歩踏み込むことで、そのためには「なにがいちばん」と「なぜ」を考えてみることが重要。
・お客様からダメ出しをされてへこんだ。
・何が一番悔しかったのかと言うと、いつの間にか慣れでこなすように仕事をしていた点を指摘されたことだ。
・薄々まずいと気づいていたのだから、早く修正しておけばよかった。
(62ページより)
このように「なにがいちばん」と「なぜ(そう思ったのか)」を掘り下げていけば、自分の気持ちを無理なく整理することができるわけです。
したがって、ことばにできないときは、とにかく「小さく分ける」べき。大きなものを大きいまま相手に渡すのではなく、相手が受け取りやすい大きさに分け、相手が受け取りやすいかたちにして渡す。それが鉄則だということです。(61ページより)
書くことは、“自分の人生を自分のことばでつくること”だと著者は述べています。それは天才でなくてもできることであり、むしろ、天才ではないからこそたどり着ける未来があるのだとも。自分のことばで思いを伝えられるようになるために、本書を参考にしてみてはいかがでしょうか。
Source: 明日香出版社


























