17歳の絶望を描き、ヨーロッパ各国で熱狂的に支持されたパンク・コミック

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今日が人生最後の日

『今日が人生最後の日』

著者
ウリ・ルスト [著]/鵜田良江 [訳]
出版社
シュークリーム
ジャンル
芸術・生活/コミックス・劇画
ISBN
9784910526782
発売日
2025/04/18
価格
4,950円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

17歳の絶望を描き、ヨーロッパ各国で熱狂的に支持されたパンク・コミック

[レビュアー] 都築響一(編集者)

 1980年代のウィーンに住む少女が、パンク・キッズの仲間になって17歳で家出。パスポートも着替えも現金も持たずにヒッチハイクしながらアルプスを越えてヴェローナ、ローマ、ナポリからシチリアまでと旅しつつ、時に物乞いしたり、レイプされたり、マフィアに軟禁されたり困難にも遭いながら、自分の言葉と行動スタイルを獲得していく現代版の成長物語。それも大判の分厚いグラフィックノベル、つまり漫画という表現に、どれだけ興味を持ってもらえるだろうか。

 著者のウリ・ルストが17歳で体験した実話をもとにしたという本書は、これまで11の言語に翻訳され、世界中で賞を獲得している古典的なコミックスだそう。

 2009年に初出版されたドイツ語版の原題は『今日が残りの人生の最後の日』。日本語版だと『今日が人生最後の日』だけれど、内容は遍歴の果てに待ち受ける「これから続いていく残りの人生」への、深い霧がかかった予感を漂わせながら幕を下ろす。

 パンク・ムーブメントは70年代後半に始まり数年間で沈静化したが、あのころの無謀なエネルギーと、持って行き場のない怒りと、明かりの見えない未来への絶望とが、物語の舞台となった84年から40年以上を経た日本でどんなふうに受け止められるだろう。80年代にはなかったインターネットやSNSやスマホやAIという武器を得て、僕らの未来にかかる霧は少しは晴れたろうか。保守的な家庭環境で窒息しかけた84年の少女より、現代の17歳の少女は、少しは賢くなれたろうか。

 一昔前であれば小説として発表されたような内容を描くのに、「小説の漫画化」ですらなく、著者は最初からコミックスというスタイルを選んだ。そうした表現の可能性をこじ開けた一冊であることを含めて、漫画が苦手なひとにこそ手に取ってもらいたい一冊だ。

新潮社 週刊新潮
2025年8月7日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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