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AIには「I」がない……人工知能の熱狂の中、必読の文庫本
[レビュアー] 藤井一至(土壌研究者)
藤井一至さん(土壌学者)のポケットに3冊
〈1〉『脳は世界をどう見ているのか』ジェフ・ホーキンス著、大田直子訳(ハヤカワ文庫NF、1540円)〈2〉『鳥類学は、あなたのお役に立てますか?』川上和人著(新潮文庫、781円)〈3〉新版『「色のふしぎ」と不思議な社会』川端裕人著(ちくま文庫、1320円)
暑い日が続くが、私たちは今、AIの夏というものを経験している。人工知能の熱狂の中にあるということだ。ただし、〈1〉の著者は、現在のAIにはI、知性がないと指摘する。囲碁に特化して人間を超えても他の事はできないからだ。人間のような柔軟性を持つ「汎用(はんよう)人工知能」が開発されても、動機を持たないAIは脅威にならないと語る。むしろ人間の欲望に忠実な「古い脳」が招いた人類存亡の危機をAIならば解決できる希望もある。
AIには思いつかないであろうユーモア満載の本が〈2〉だ。著者は私の前職の先輩だが、面白い人であること以外は知らなかった。小笠原諸島でヤギやネズミ等の外来種が野鳥を絶滅の危機に追いやっていたこと、外来種の駆除によって保全に貢献していたことを知った。保護対象の「オガサワラカワラヒワ」の知名度がトキよりも低いだけで、鳥類学者は確かに私たちの役に立っている。
同じ鳥でも、絶滅したドードーを追いかけた川端氏が人の色覚異常の問題をまとめたのが〈3〉だ。哺乳類の祖先に多いモノクロ型色覚(昆虫発見に有利)から、森で暮らす霊長類に3色型色覚(果物発見に有利)が現れた。現代では3色型色覚が弱いと先天異常と不当な扱いを受けることもある。男性の5%とされてきた「軽微な色覚異常」は、実は人口の4割を占め、色覚の多様性と捉えるべきだと主張する。人間の想(おも)いは熱い。=寄稿=























