キーエンスは特別じゃない。誰でもできる「基本の徹底」で成果を出す仕事術

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入社1年目の戦略

『入社1年目の戦略』

著者
岩田 圭弘 [著]
出版社
ソシム
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784802615105
発売日
2025/07/23
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】キーエンスは特別じゃない。誰でもできる「基本の徹底」で成果を出す仕事術

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

キーエンスといえば、高待遇・高成長を続ける優良企業として有名。いかにもエリート集団といったイメージがありますが、同社の出身である『入社1年目の戦略--キーエンスで学んだ超・高生産性の働き方』(岩田圭弘 著、ソシム)の著者によれば、決してそういうことではないようです。

キーエンスで働く人は、特別な才能を持っていたり突出した知識があるわけでもなく、“誰でもできる基本的な行動を、やり続けているだけ”。そうすれば、成果を生み出し、思い通りの年収を手にすることも可能だというのです。

たとえば10分、15分でも時間を節約できれば、そのぶん「目的」のために時間を使うことができます。キーエンスの社員が他社よりも優れた待遇を受けることができるのは、そんな「ちょっとした行動」の積み重ねがあるからだということです。

キーエンスには、「最小の資本と人で、最大の付加価値をあげる」という経営理念があります。確かにすぐれた商品を多く持ちますが、特別な商品ばかりではありません。ですが、それらを全社員が小さな努力を積み重ね、極めて低コストかつ高価格で販売することで、他社には真似できない高収益を上げているのです。

そのおかげで、キーエンスは社員の高い報酬を維持することができています。(「はじめに」より)

事実、著者も仕事に100%向き合うことを大切にしていたそう。仕事とプライベートとの境界線はあるものの、仕事の時間は仕事にすべてを賭けて打ち込んでいたというのです。それは、キーエンスで働く多くの人が持っている感覚でもあるようです。

なぜ、日本のどこにでもあるメーカーで、そのようなことが起きているのか?

それは、キーエンスという会社が入社1年目に圧倒的成果を上げる人材を育て上げる仕組みを整えているからなのです。(「はじめに」より)

きょうは第2章「キーエンス式 付加価値を生み出す『思考術』」のなかから、いくつかのポイントをピックアップしてみることにしましょう。

電話は「3コール以内」で取る

キーエンスには、「電話は3コール以内に取る」というルールがあるそうです。さほど珍しくないことのようにも思えますが、そこには深い意味と効果があるようです。

キーエンスの創業者である滝崎武光さんは起業当時を振り返り、「最初は引き合いが来るかどうかわからなくて眠れなかった」と語っています。

お客様から連絡がこなければ、いい製品も売れません。その貴重なチャンスを逃さないために、「3コール以内に必ず誰かが電話を取る」というルールがあるのです。(116ページより)

電話をとったら、できるだけ「折り返し」を発生させないように工夫することも大切。たとえば東京都担当の営業スタッフが外出中に、東京都のお客様から電話がかかってきた場合、同じチームの神奈川県担当が対応するのだといいます。

「担当者は不在ですが、ご用件をお伺いできますか?」と聞くと、多くの場合は「検討しているのでもう一度来てほしい」という商談の機会だったり、「製品が不調で困っている」というアフターフォローの要請だったりするそう。つまりそうした場合は、担当者が不在でも、その場でアポイントを取るなどして問題を解決できるわけです。

私も、月末の最終営業日に問い合わせがあり、その場でアポイントを組んで訪問してもらい、その月のうちに受注できたケースがありました。会社にとって売り上げ面でメリットがあるだけでなく、お客様の事業もうまくいきます。

もし「担当者に折り返しさせます」と言ってしまったら、お客様の満足度は著しく下がり、大事な商機を逃していたでしょう。(117ページより)

ちなみに3コール以内に電話に出られないと、翌日の朝礼で「3コール以内に出ない人がいて……」と全員の前で指摘されるのだとか。なかなかハードですが、それくらい徹底しているからこそ結果を出すことができるのかもしれません。(116ページより)

質より「量」にこだわれ

営業の現場では、「テレアポが苦手で……」「プレゼンが得意ではなくて……」というような声を聞くことがあります。ところがキーエンスでは、苦手意識を表すようなことばは聞こえてこないのだそうです。

それは、自然と「やる習慣」が身についているからです。キーエンスでは厳格な行動管理が行われています。苦手でも、やらざるを得ない環境があるのです。そして不思議なことに、「苦手」もやり続けるうちに、次第に克服されていくのです。(128ページより)

「朝8時30分に始業し、ただちに電話をかけ始める」という日課は、とても厳しいように思えるかもしれません。しかし毎日続けていると、それは「苦手」ではなく、まるで歯磨きのような「日常的な習慣」になるというのです。そこまでたどり着くと、電話をかけていない時間にはそわそわしてしまうほどだといいます。

ただし、これはキーエンスだから可能だというわけではないでしょう。事実、著者が経営に携わったアスエネという会社でも、キーエンス流の“徹底した行動管理”を行っていたそうです。

見ず知らずの会社に電話をかけて断られる経験は、最初は非常に辛いもの。しかし、あえて最初に集中的に経験してもらいます。すると、驚くことに大体1日で慣れてくるのです。この「慣れ」こそが、「苦手」を克服する最も効果的な方法です。(129ページより)

もちろん営業現場では、「こんなにたくさん電話をして意味があるのか」と疑問の声が上がることもあるはず。しかし「量」だけを重視すればいいということではなく、「量と質は相関している」がキーエンスの考えなのだそうです。

結局のところ、量をやらない限り、質をよくすることはできないのです。例えば、100件の電話をかけてアポイントメントが取れなければ、「どこに電話をかけているのか」「なぜそこに電話をかけたのか」という原因究明ができますが、大して数もかけていない人にはアドバイスのしようがありません。(130ページより)

量をこなすことは簡単ではありませんが、続けていればやがて仕事の質や結果が変わってくるということです。(128ページより)

冒頭で触れたように、重要なポイントは「ちょっとした行動」を積み重ねていくこと。そうすれば誰でも、仕事で思いどおりの成果を上げることができる。本書は、そう断言する著者の実体験に基づいているからこそ、大きな説得力を感じさせるのでしょう。

Source: ソシム

メディアジーン lifehacker
2025年8月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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