成果の出ない努力はもう終わり。孫子が教える「本当に意味のある戦い方」

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決定版 小さな会社こそが勝ち続ける 孫子の兵法経営戦略

『決定版 小さな会社こそが勝ち続ける 孫子の兵法経営戦略』

著者
長尾 一洋 [著、イラスト]
出版社
明日香出版社
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784756924117
発売日
2025/07/15
価格
1,980円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】成果の出ない努力はもう終わり。孫子が教える「本当に意味のある戦い方」

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

孫子は、今から2500年ほど前に著された、最古にして最強と言われる兵法書である。

紀元前から21世紀まで評価され続け、時代の変化、環境の変化にも色褪せない、その最強の兵法を現代の企業経営に活かすのが本書の狙いだ。(「はじめに」より)

決定版 小さな会社こそが勝ち続ける 孫子の兵法経営戦略』(長尾一洋 著、明日香出版社)の冒頭にはこう書かれています。たしかに、それは意義ある発想だといえるでしょう。

とはいえ2500年も前の著作なので、そのまま現代語に訳しただけでは伝わりにくいかもしれません。そこで本書では企業経営に役立ちそうな部分を厳選し、軍事の解説ではなく経営についての解説へと大きく意訳しているのです。

大切なことは古典を正しく学ぶことではなく、孫子の智慧を正しく実践、応用し、成果を出すことだ。

成果の出ない努力など「時間の無駄」「骨折り損」だと孫子自身が言っている。

紀元前の古典として孫子を学びたいなら、孫子の解説本はたくさんあるのでそちらをお読みいただきたい。(「はじめに」より)

孫子の作者は、中国春秋時代の斉の国に生まれ、呉の国王に仕えた兵法家である孫武だとされています。孫武が実在したのか、そもそも孫子は本当に孫武の著作なのかなど、さまざまな議論もあるようですが、「そんなことは気にしない」と著者は断言しています。「内容に価値があれば、それでいい」のだと。

そこまで「経営」に振り切っているからこそ、本書は説得力を感じさせるのかもしれません。第7章「軍争篇 不利を有利に変える経営」から、ビジネスに役立ちそうな2つの兵法を抜き出してみましょう。

有利を不利に見せ、不利を有利に変える

孫子曰く 軍争の難きは、迂を以て直と為し、

患を以て利と為すにあり。(196ページより)

[意訳]遠回りを近道とし、マイナスをプラスに転じることができるのは、長期戦略と短期戦術を踏まえたマネジメントがあるからであり、目先の現象に左右されていては勝つことはできない。(196ページより)

迂回して遠回りしているように見せかけておいて、じつは先回りしている。あとから出発したのに、先に到着する。そのような“遠回りを近道に変える戦術”を「迂直の計」というそうです。

そうしたことができるのは、全体観を持ち、長期戦略と短期戦術とが頭のなかでつながっているから。したがって経営者は、「迂直の計」を知る必要があるのです。

たとえば競合企業がどんどん売上を伸ばし、社員数も増やしているとしましょう。しかし実態はゴリ押し営業と急速な拠点展開で、相当無理をしています。そのため、やがて顧客サービスが低下し、社員の質も落ちてきて、顧客からのクレームも増えてくることに――。

順調そうでスピーディーな経営ができているように見えても、少し長い目で見るとそれが破綻への道になるかもしれないわけです。

対する自社は顧客サービスに力を入れ、既存顧客へのアフターフォローに注力しているとします。しかしそれでは、売上はなかなか伸びず、育成にも時間がかかるため社員数を増やすことも困難です。その一方で競合企業がどんどん伸びていれば、つい焦ってしまうかもしれません。すると、目先の売上を追うようになり、顧客への対応もおざなりにしてしまいがち。

しかし、そこは経営者の長期的な視野、全体観で大切にすべきこと、今やっておくべきことを忘れないようにしたい。(198ページより)

社員からは、遠回りで、迂回しているように見えるかもしれません。しかし先を見通している経営者にとっては、それこそが近道であり、進むべき道であるということがあるわけです。(196ページより)

小さな会社は希望が持てるビジョンが必要

孫子曰く 軍政に曰く、言うも相聞えず、故に金鼓を為る。視すも相見えず、故に旌旗を為る。

金鼓・旌旗は人の耳目を一にする所以なり。(208ページより)

[意訳]理念や目的、将来ビジョンに対して全員が魅力を感じ、共感共鳴していなければ、日々のマネジメントをいくら厳しくしたところで、有効な行動は導き出せないものである。(208ページより)

大軍を動かすときには口で話しても聞こえないので鉦(かね)や太鼓を用い、手で指し示しても見えないため、旗や幟(のぼり)を用意する。しかしそれは単なる手段の違いにすぎない。大切なのは、人の耳目を一にする、すなわち全員の意識を統一することである。

孫子はそう説いたといいます。

手段は何でもいいのだ。

法螺貝(ほらがい)でも、狼煙(のろし)でも、デジタルでも、動画でも、手段はその時、その場に合わせて選択すればいい。

問題は組織全体の意識統一にある。

現代企業の経営で言えば、組織を動かす時には、全員が納得し、共感し、魅力を感じる旗印が必要だということだ。(209ページより)

ここでいう旗印とは、理念であり、経営の目的であり、使命感であり、あるいは将来ビジョン。自分たちは何者で、なにをしようとしていて、それが実現することでどういう価値が生まれるのかを共有するということ。

そしてそれを明確にし、全社で共有するためには、全員が魅力を感じ、共感共鳴できるビジョンを地図にするべき。つまりは目的地の可視化です。

目指している目的地が明確であれば、どういう道順で行けばいいか、どのくらいのペースで進めばいいのかがわかり、社員も意見やアドバイスを出せるはず。目的地に行く意味がわかれば、そこにつながる目の前の仕事にも意味があることに気づけるということです。(208ページより)

いま孫子が必要なのは、「がんばれば売れる、いいものをつくれば売れる、安くすれば売れるという時代が終わったからだ」と著者は述べています。

そんな時代を生き抜くために、いまこそ最古にして最強の兵法である孫子が必要なのだとも。とくに小さな会社にとっては、大きく役立ってくれそうな一冊です。

Source: 明日香出版社

メディアジーン lifehacker
2025年8月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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