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「戦争」は8月15日ですっきりとは終わっていない 真の戦後を考える文庫群
[レビュアー] 辻田真佐憲(作家・近現代史研究者)
辻田真佐憲さん(近現代史研究者)のポケットに3冊
〈1〉『巣鴨プリズン BC級戦犯者の記録』田嶋隆純編著(講談社学術文庫、1320円)〈2〉『「文明の裁き」をこえて』牛村圭著(ちくま学芸文庫、1760円)〈3〉『兵士たちの戦場』山田朗著(岩波現代文庫、1760円)
終戦記念日が過ぎ、歴史の話題も一区切りついた。そう感じるかもしれない。だが「戦争」は八月十五日ですっきり終わったわけではない。その後、戦犯裁判が行われ、多くの命が刑場で奪われた。東条英機らA級戦犯はよく知られているが、BC級戦犯もまた存在した。かれらの多くは、捕虜虐待など通常の戦争犯罪で裁かれたものたちだった。
〈1〉は、巣鴨プリズンでそんなBC級戦犯の教誨(きょうかい)師を務めた仏教学者が自身の体験をまとめたもの。死刑執行の前夜、囚人たちが最後の晩餐(ばんさん)を味わい、久しぶりの酒を口にし、高歌放吟して心を落ち着かせたという悲劇的なエピソードは、あまり知られていないのではないか。
いや、語り尽くされたはずのA級戦犯の裁判も、その経過はほとんど知られていないだろう。〈2〉はこれを再検討し、「文明が野蛮を裁く」という単純な構図を突き崩している。オランダ人判事やアメリカ人弁護人の人物像や思想に鋭く迫り、既成の東京裁判観を揺さぶる労作である。
戦中の体験も、実は戦後に記録されたものが多い。〈3〉はそのような回顧録八五四点をもとに、兵士の目線で太平洋戦争の流れを再構成した一冊。もちろん、回想は戦後の価値観に影響されており、一部は強調され、別の部分は隠される。戦中と戦後はこんなにも絡み合い、容易に切り離しがたい。終戦記念日をもって一区切りといえないゆえんである。=寄稿=























