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文庫で読む〈作家小説〉特集。小説を書く人間とは。「真実の言葉で嘘をつく」のか?
[レビュアー] 杉江松恋(書評家)
作家とは何者か。
小説がいかに生成されるかという謎を壮大な規模で描いた『標本作家』は、第十回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作であり、作者の小川楽喜は本作でデビューを果たした。
西暦80万2700年、人類はすでに滅亡していたが、地球に飛来した高等知的生命体〈玲伎種〉によって、過去に活動した作家たちの叡知が再生されていた。最高の小説を生み出すため、彼らは永遠の生命を与えられたのである。
前半では、〈終古の人籃〉と呼ばれる施設で執筆を続ける作家たちの群像が描かれていく。これが小説のジャンルに対する批評になっており、たとえばゴシック小説は、先行作の着想に改変を施すことで再生産を行う存在として規定される。
作家たちは〈異才混淆〉と呼ばれる合作システムにより作品を生成する。そのやり方に疑問を抱いた人物が語り手となり、小説はいかに生み出されるべきものか、という問題提起が行われるのが中盤で、小説を書く人間とは何かという点にまで思弁は深められていく。SFにはあまり関心がない人にもぜひお読みいただきたい、作家小説である。
金原ひとみ編著『私小説 作家は真実の言葉で嘘をつく』(河出文庫)は、現代における私小説のありようを追究するアンソロジーだ。町屋良平「私の推敲」では、日常生活においても作家性が顔を出す自意識のありようが描かれ、高瀬隼子「卵」では逆に、徹頭徹尾作家の身体に関する叙述が行われる。書き手である作家と、その文章によって成立する小説との関係が多角的に検討されるのである。
田辺聖子『欲しがりません勝つまでは』(光文社文庫)は、日本の勝利を信じる軍国少女として十代を過ごした著者による回想記だ。敗戦によって国に裏切られたことを知った田辺は、同じ失意を若い世代に味わわせたくないという思いが執筆の原点にあるのだろう。
そうした主題とは別に、十代の田辺がすでに旺盛な執筆力を発揮していることにも驚かされる。なるべくして作家になった人の下地が見える一冊でもあるのだ。























